土壌呼吸とCO2

光合成でCO2から有機化合物が合成され、合成された有機化合物は最終的には分解してCO2へ戻る。この分解のプロセスは主に地下で進むために土壌呼吸(Rs: Soil Respiration)とも呼ばれる。土壌呼吸は、独立栄養プロセス(autotroph)と従属栄養プロセス(heterotroph)からなり、土壌から大気へ CO2 を排出する(1)。下図の緑の部分は光合成を示し、赤い部分が土壌呼吸である。主要な従属栄養プロセスは、微生物の生物学的プロセスで、地球上の最大の炭素サイクルプロセスである(2)。世界の土壌呼吸による1年あたりの CO2 排出速度は、約 70 GtC/yearと推定され、気温および降水量と正の相関がある(3)。因みにIPCCは60 GtC/yearと推定している(→温暖化の科学の出発点)

Rs = Rheterotroph + Rautotroph                                                                (1)
= eq-2                                                           (2)
= CO2排出速度(約 60~70 GtC/year )        (3)

fig-1
Fig.1 土壌呼吸プロセス(4)

従って、(2)、(3)式から乾燥地帯でなければ温度変化が律速となり、CO2の濃度変化速度は(4)式で表されることになる。この式はMurry Salby により提唱された。(→大気中のCO2 濃度は温度で決まる)

eq-4                      (4)

あるいは、

eq-5                     (5)

整理すると、温度が変化すると土壌呼吸の微生物プロセスが影響を受けCO2排出量が変わる。このプロセスは最大の炭素サイクルである。植物の分解は生物学的プロセスなので、温度が変化してもすぐ変化するわけでなくある時間のずれがある。前回整理したように、温度とCO2の相関は10~12ヶ月のずれとなる。さらに、オークリッジ国立研究所のデータベースに基づくと、従属栄養プロセスから発生するCO2分布量の推定値は下図のようになる(3)。

fig-2
Fig.2 従属栄養プロセスから発生するCO2量の推定値(3)

上の図は、下に掲げる森林面積の分布図と人工衛星からのCO2濃度の測定結果図と良く呼応している。これらの結果は、CO2の濃度が植物分布と分解のプロセスに大きく依存すること、温度が大きな因子であり熱帯雨林の地域がCO2の大きな発生源であることを示す。

fig-3
Fig.3 森林面積の分布図(5)

fig-4
Fig.4 人工衛星からのCO2濃度の分析結果(6)

CO2の濃度は季節に応じて変化する。自然界で発生および消費されるCO2は光合成と植物体の分解プロセスに関連する。下図で示すように、季節による濃度変化は南極で小さく、北に行くほど大きくなる。南半球は陸地面積が小さくかつ森林面積が小さい。一方、北半球は陸地面積が大きくかつ森林面積も大きい。さらに熱帯に比べると、一年の温度変化は緯度が高くなるほど大きくなる。従って、年間を通して植物体の分解量の変化が、北半球でしかも北に行くほど大きくなるものと考えられる。(→温暖化の科学の出発点3) (→温度上昇で増加するCO2はどこから)

fig-5
Fig.5 地球上の各地点におけるCO2濃度の変化 (7)

自然界には13Cが1.1% 存在し、光合成は12CO2を13CO2よりも多く取り込む。従って、植物が分解してCO2を放出すると大気中の12CO2の割合が増え13CO2の割合は減少することになる。下図の結果は、植物分解から放出されるCO2の大気中のCO2への寄与が大きいことを示している。

fig-6
Fig.6 CO2の変化と13C変化との関係(8)

2015~2017年は、エルニーニョの年であった。2015年は、2011年 に比べて、温度は0.25℃高く、2011年の人工衛星のモニタリングによる COの観測結果と比較して約 2.5 Gt の CO2 が熱帯地域から発生した(9)。この CO2 の上昇の主原因は高温における植物分解によるものと解釈できる。

fig-7
Fig.7 人工衛星の観測による2015年のエルニーニョの時のCO2発生量(9)

地球全体の土壌の炭素の蓄積は2,000 GtC と推定されている。これは、大気(615 GtC)、生物(730 GtC)の約3倍である(10)。土壌中の有機分解物は土壌の肥沃度に良い効果をもたらす(11)。たとえば、有機栽培により農作物を生産するためには、生物的性質が重要であり、土壌微生物を適切に保つ必要がある。生成するCO2は、有機分解物および土壌微生物の指標でもある。肥沃度の高い土壌は有機栽培にも優れている(12)。

IPCCが主張する“CO2が増加すると温度が上昇する”というのは証拠のない仮説である(温暖化の科学の出発点)。地球の温度が上がると土壌中の生物プロセスが活発になり有機物の分解がより進行する。そして排出するCO2が増加する。生物プロセスは微生物のプロセスで平行して土壌の肥沃度も増し環境にとっても良い。また観測されているように(Fig.9)、CO2の上昇と肥沃度の増加で地球の緑化が進行する(13)。植物の分解で排出されたCO2で温度がさらに上がるという正のフィードバック効果も証拠のない仮説である。現代のような温暖化、CO2の上昇は地球環境にとり望ましい。脱炭素の必要性は見出せないばかりか、かえって地球環境にとっても良いとは言えない。

fig-8
Fig.8 CO2が増加すると温度が上昇するというのは証拠のない仮説である

 fig-9

Fig.9 衛星観測は1982-2010年の間、地球の緑化が進行していることを示す(13)

  1. Global Gridded 1-km Soil and Soil Heterotrophic Respiration…
  2. The Effects of Global Climate Change on Soil Respiration…
  3. ORNL DAAC GLOBAL ANNUAL SOIL RESPIRATION DATA…
  4. https://www.diffen.com/difference/Autotroph_vs_Heterotroph
  5. https://www.shinrin-ringyou.com/forest_world/menseki_world.php
  6. https://disc.gsfc.nasa.gov/information/news?title=Satellite…
  7. https://gml.noaa.gov/ccgg/trends/gl_trend.html
  8. https://gml.noaa.gov/outreach/isotopes/images/global_trends.jpg
  9. https://www.aaas.org/news/satellite-shows…
  10. https://ja.wikipedia.org/wiki/…
  11. https://ja.wikipedia.org/wiki/…
  12. SOFIX – 食と農のスロー&ローカル・イノベーション地域拠点…
  13. https://doi.org/10.1002/grl.50563
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