Monthly Archives: August 2023

El Niñoで燃焼排ガスの半分に相当するCO2が放出する

-    温度変化、CO2変化速度、およびEl Niño現象 1979年から人工衛星による地球の温度の観測が始まった。観測、解析しているのは、UAH(The University of Alabama in Huntsville)とRSS(Remote Sensing Systems)の二つのグループである。図 1 には、UAHで測定されている対流圏下部の温度変化を示す。高度、約 3,000メートル付近の温度である。赤い実線は、その月の前後6ケ月を含んだ13カ月平均を示す。上下を繰り返しながら非常に緩やかに上昇している。各高度、および各地域を含めたオリジナルのデータはWeb上で毎月初めに入手可能である。 Fig.1 UAHによる人工衛星で観測した対流圏下層における温度(1) 下図は、年ごとのCO2の増加量を示したNOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration)が発表している結果である(2)。NOAAのオリジナルのデータおよびグラフはWeb上で入手可能である。季節によりCO2濃度が大きく変化するので、前年の年間の平均値が示されている。季節によるCO2の変化は、夏の光合成による植物体によるCO2の吸収と、冬の光合成が不活発な時期の植物体の分解に依存している。分解残留物は、土壌中に溜まっていく。前回のIPCCの炭素サイクルの図で示したように、表面の植物体と合わせると炭素換算量で1950-3050 GtCである。化石燃料の埋蔵量446-541 GtCより遥かに多い量である。これらの有機炭素が分解し、温度が上昇すると分解量も多くなるのである。温度上昇で発生するCO2の量は莫大である。これまで何度も述べて来たように、CO2濃度の変化速度は温度変化と良く対応している。下図で示されているNOAAのCO2の年間の変化量(ppm/year)は言わば一年ごとの変化速度である。 Fig.2 NOAAの報告によるCO2の年間の変化速度(ppm/year)(2) 温度変化とCO2の変化速度には良い相関あることは、上記の二つのデータを比較すると良くわかる。また温度変化はEl Niño現象と良い相関があることがわかっている。そこでEl Niño指数(3)を使って調べるてみると、これらの三つのデータに良い相関があることがわかる。下図にその相関を示す。なお、6/15/1991のMt.Pinatuboの噴火の時、15か月にわたり 0.6 ℃ 温度が下がっている。従って、この時期の相関は良くない(4)。 Fig.3 1979-2022年の間の衛星による温度測定値(対流圏3,000m、13カ月平均anomaly、℃)、NOAAによるCO2増減観測値(ppm/year)、およびEl Niño 指数との相関 CO2濃度は1959年から2022年まで平均1.60 ppm/year(= 3.42 GtC/year)の変化速度であった(単位の換算については前回を参照)。数年おきに起きるCO2増加の変化は、El Niño指数で示すようにEl … Continue reading

Posted in Energy, Global Warming | Leave a comment

温暖化している時はCO2濃度を下げられない

- 全化石燃料の燃焼を止めても 夏は食べ物が腐りやすい。温度が上がれば腐る速度は速くなる。CO2を出しながら分解しているが、微生物による生物プロセスなので時間がかかる。雨の多い日本は緑に溢れる。多くの植物体は毎年新しい新芽にとって代わる。木々は100年以上生きるものもある。極端な例が、屋久島の万代杉で樹齢3000年である。しかし、いずれ死に絶える。古い植物体は土の中に埋まったり、地表に折り重なったりする。最後は、CO2を出しながら分解して次の世代にとって代わる。見た目には変わらない緑だが、年々世代交代をしている。この世代交代による、地球上から放出されるCO2は莫大な量である。燃焼排ガスと違って目立たないだけである。夏や熱帯地方では植物の分解によるCO2の発生量はより多い。 Fig.1 横山展望台から眺めた緑で覆われる英虞湾 (5/17/2023、筆者) 下図は、IPCCの報告書(AR5-Chap.6-Fig.6.1)からの地球の炭素サイクルの概略である。植物体の分解量は合成量に追いつけず少しずつ溜まっていく。これらの残留物は、図中でSoil中の炭素換算量として1,500-2,400 GtCと記されている。化石燃料よりも遥かに多い量である。表面のVegetation 450-650 GtC と合わせると非常に多い。これらの有機炭素が分解するわけで、温度が上昇すると分解量も多くなる。だから、温度上昇で発生するCO2の量は莫大である。 Fig.2 地球の炭素サイクル量(単位: GtC/year)。 工業化以前は、黒い数字と矢印で、2000 年から 2009 年の間の平均値を赤い矢印と数字で示す。(AR5-Chap.6-Fig.6.1)(オリジナルの図にリンクすると拡大して見ることができる、赤い矢印と数字は 人為的な起源とみなされる-筆者) 上記のIPCCの図は、この分解プロセスをrespiration and fire 118.7 GtC と示している。fossil fuelの燃焼等の人為的な排出量の総計8.9 GtC より遥かに多い量である。不幸にも、炭素サイクルに基づいたIPCCの解析は有機炭素の分解プロセスあるいは土壌呼吸(→土壌呼吸とCO2)の温度依存性を考慮していない。致命的な問題である。地球が温暖化している過程では、温度上昇で有機炭素が分解して発生するCO2の増加量は、人為的な燃焼排出ガスからのCO2を凌駕する量である。そして、例え化石燃料の燃焼をゼロにできたとしても、多くの場合CO2濃度を下げることはできない。以下、このことをHermann Hardeの論文(1)を基に定量的に考察していく。 燃料の燃焼などによるCO2排出量は下の図4のように報告されている。2012年の時のCO2排出量は約28.6 billion tでIPCCによる上の図2の7.8 GtCに相当する。 ca. 28.6 billion t CO2 –> 7.8 … Continue reading

Posted in Energy, Global Warming | Leave a comment