Monthly Archives: September 2022

現代の温暖期は気候最適期

恐竜の時代は手が届きそうにない遠い昔だが、人類が出現した頃となるとどういう時代だったのか考えてみても良さそうである。その時代は第四紀(Quaternary period)と呼ばれる。258 万 8000 年前から現在までの期間で、人類の時代という意味で決められた。ヒト属の出現を基準とし、地質層序や気候変動を併用して決定している。第四紀は、氷河時代とも呼ばれるように気候は寒冷になり、約 70 万年前からは大陸氷河は約 10 万年ごとに拡大縮小を繰り返してきた。氷河期にはヨ-ロッパや北米の大半は厚い氷床に覆われていた。 下図で示すように、北米はローレンタイド氷床 (Laurentide Ice Sheet) で覆われていて、厚さが 2,400–3,000 m のところもあった。以前住んでいたコロンバスはローレンタイド氷床の南端に位置する。コロンバス郊外に氷河公園 (Glacier Ridge Park) と名付けられた所がある。14,000 年前は、氷床で覆われていたという名前の由来の説明書きがある。 Fig. 1 第四紀のローレンタイド氷床 下はこの公園で日の出を撮った写真である。このブログのタイトル写真も公園内での一コマである。 Fig.2  コロンバス近郊に Glacier Ridge という公園がある。14,000 年前の氷河期にはこの辺りまで氷床で覆われていた。(9/16/2019) ベーリング海の名前で知られる、デンマーク生まれのロシアの探検家ベーリング (Vitus Bering) は、ユーラシア大陸とアラスカが陸続きではないことを発見した。ジュノーからアンカレッジの間にベーリング氷河という北米で一番大きい氷河がある。その氷河の端には氷河湖が形成されヴィタス湖と名付けられている。氷河と湖の名はベーリング (Vitus Bering) に因んでいる。 Fig.3  ジュノーからアンカレッジの間の上空から見えたベーリング氷河と太平洋岸で形成する氷河湖のヴィタス湖  (9/11/2021) … Continue reading

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気候変動に及ぼす主な自然変動

これまでのブログで地球の温度が変化し、その結果 CO2 が変わると言うことを述べてきた。現代の地球の温度は、CO2 の影響ではなく自然のサイクルで変わっているという主張である。そして、自然サイクルについて分かっていることをまとめようとすると、詳細について我々はまだまだ解明できていないことに気がつく。 気候変動とは地球表面のエネルギーが変動することであり、地球に降り注ぐ太陽エネルギーの変動に密接に関係している。また太陽エネルギーを受け取る側の地球の公転、自転の変動も関わってくる。地球は水の惑星であり、水は比熱、熱容量とも地球上では圧倒的に大きい。海は非常に大きなエネルギーを蓄えていて、表面、上下の方向へゆっくりと動いている。海が気候変動に大きく関わっていることは間違いない。 以下では、太陽の変動、地球の変動、海の変動について重要と思われることをまとめてみた。さらに、それら以外で最も影響の大きい火山の噴火について触れてみる。 1. 太陽の変動 太陽周期活動 – 太陽の活動が活発になると黒点の数は増える。そして黒点の数は 11 年周期で変動する。ある周期と次の周期では、先行黒点と後行黒点の磁場極性や極磁場の極性の反転があり、この効果も考えると周期は 22 年になる。11 年周期の変動と地球温度の変化には相関がみられる。11年周期は太陽の活動が大きいとやや短くなり逆に小さくなるとやや長くなる。下図は、その変動周期と北半球の平均気温変化を比べたものである。 Fig.1 太陽黒点数の変動周期と北半球の平均気温変化 太陽磁場とそれに伴って、地球磁場が変わると地球に到達する宇宙線の量が変化する。そして、宇宙線の量と雲の量には相関があることが見いだされている。雲の量が変われば温度も変わる。   Fig.2 黒点数(黒)と宇宙線量(灰)の変動   Fig.3 低層雲量(青)と宇宙線量(赤) 太陽の極小期と極大期 – 通常より弱いいくつかの太陽サイクルが数 10 年あるいは 100 年間重なると極小期として知られる現象が起きることがある。この極小期が過去 11,000 年の間 25 回起きた。最近の良く知られた例が、1645 年と1715年の間に太陽黒点が消失したマウンダー極小期である。日本では、マウンダー極小期に、享保、天明、天保の三大飢饉が起きた。下表で示すように、ローマ温暖期、中世温暖期さらに現代の温暖期は極大期に関連している。 Fig.4 太陽黒点の変化  Table … Continue reading

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現代の温暖期の整理 – CO2 濃度変化は原因ではなく結果である

******************** 産業革命以降、人為的な CO2 の排出量が増えてきた。19 世紀後半になると、小氷河期が終わり少しずつ温暖化が始まった。気温上昇とともに自然界の CO2 の排出も徐々に増えてきた。炭素バランスによると、自然界の CO2 排出量が圧倒的に多く、人為的な CO2 排出量は 5 % 以下に過ぎない。CO2 のバランスは、人為的排出と自然の排出からなる排出プロセスと、吸収プロセスからなる。大気のプロセスを解析すると、自然界の正味の CO2 年間排出量は温度変化により決められる。また吸収プロセスは、CO2 濃度に比例する一次速度式になる。産業革命以前の CO2 濃度は 280 ppm だったが、2020 年の CO2 濃度は 130 ppm 増えて 410 ppm である。解析によると、増加分 130 ppm のうち、18 ppm (14%) が人為的な増加分、そして 112 ppm … Continue reading

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CO2 変化より先行する温度変化

大気温度の上昇が CO2 の放出を促す。Thermally-induced CO2とも言う。人間活動を含む環境では、CO2 のバランスは自然界の放出と吸収で決まり、そこに人為的な放出が加わる。温度が上がると、温度に依存する CO2 の放出が増える。この放出は、自然界のあらゆるプロセスを含む。海からの CO2 の放出、生物体の分解、地面からの放出、生物体の呼吸などである。 太古のアイスコアの分析データは大気温度の変化が CO2 の変化より 1000 年程度先行することを示す。しかし、IPCC 初め多くの人は逆に CO2 の増加が温度上昇の原因であると考える。以下、温度変化と CO2 変化の相関に関して、注目に値する下記の論文からまとめる。 Ole Humlum, Kjell Stordahl, Jan-Erik Solheim Global and Planetary Change 51, 100, 2013 この論文では、よく知られているデータセットで、1980 年 1 月から 2011 年 12 月までの期間の … Continue reading

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大気中のCO2の放出、吸収の速度論

Salbyの講演を辿りながら現在と将来の CO2 の変化を整理していく。なお、大気科学ではモル比(およその濃度を表す)の代わりに次式で定義される mixing ratio が使われる。              (1) 彼の講演においても CO2 の濃度の代わりに mixing ratio という用語および r が使用されている。 CO2 の収支は放出と吸収のバランスで決まる。下に示す IPCC の炭素バランスから人為起源の CO2 (anthropogenic CO2) は  5 GtC/yr、そして自然界で放出、吸収される CO2 は  150 GtC/yr である。これらの収支で決まる量がCO2 の増減速度である。 Fig.1 CO2バランス(Salby の講演スライドから) 従って、       (2) Fig.2 CO2サイクルにより決まる炭素バランス(講演スライドより) 人為的 CO2(SourceHuman) の放出は自然放出の CO2(ΣSources) より小さいので無視できる。さらに、今まで整理してきたように自然放出の CO2 は温度で決まる … Continue reading

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自然放出と人為放出のCO2

温度と CO2 の相関関係を考える上で、大きな誤解があるものと思われる。 CO2 の発生源についてである。今も増え続けている CO2 は、その全てが燃料を燃やして発生した人為起源の CO2 (anthropogenic CO2) だけではない。これまで述べてきたことを整理すると次のようになる。 炭素サイクルの質量バランスにおいて人為起源の CO2 は 5% 以下である。 人為起源以外の 95% 以上の CO2 が自然サイクルに関連する。 温度と CO2 濃度には相関があるが、温度変化が先行する。 温度変化は CO2 の正味の変化(たとえば一年ごとの濃度の増減)と良い関係がある。 温度が上昇すると自然サイクルによる CO2 の放出が増える。 これらの事実に基づくと、人為起源の CO2 が地球を温暖化しているということは誤りになる。地球上には下の写真で示すように動植物で溢れる。最初の写真は昨年訪れたアリゾナ、フェニックス近郊のサボテン公園、そして次の写真は多くのカナダ雁が凍った川面で休んでいるところである。 Fig.1 Cactus Park in Scottsdale, AZ (10/28/2021) Fig.2 凍った川の水面で羽を休めるCanadian Geese (2/24/2015) これらの生物体は、発生してもいつか死滅、分解して生物体として平衡状態を保つ。この分解過程は日々の生活の中では目立たないので、大した量ではないと思うかもしれない。しかし、成長する植物と同量の朽ちた植物が分解していくのである。IPCC の炭素バランスを見てみると、循環している炭素のおよそ … Continue reading

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大気中のCO2による赤外線吸収は吸収の上限に近い

温度とCO2濃度は相関関係がある。どちらかが卵かニワトリである。19世紀末に Tyndall と Arrhenius が提唱して以来、 CO2 が増減して温度が変化するという概念が受け入れられてきた。これを国連組織の IPCC が強く主張するに至り、ほとんどのメディアおよび国の機関が追随するという図式が確立している。しかし、下図で示すように何十万年という長い期間温度が周期的に変わってきたのだから、現代の温暖化もその周期の一過程なのかも知れない。温度は太陽エネルギーの変化等で変わるが、CO2 が自然に周期的に変化してきたとは少々不可解なことである。 Fig.1 南極のアイスコアサンプルの解析から得られたCO2と温度の変化 現在の CO2 による温暖化の概念は、そもそも 1896年 の Arrhenius による指摘に基づいている。彼により、 CO2 の赤外線吸収の特性とそれによる温暖化の可能性が、論文 (Phil. Mag. 41, 237, 1896) で報告された。 Fig. 2  Arrheniusの論文 一方、当時の標準教科書、”Physics of the Air” (W. J. Humphreys, 1929, McGraw-Hill) の 564 … Continue reading

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温度上昇で増加するCO2はどこから

前回の Murry Salby の講演で紹介したように、大気温度とCO2は相関していて、温度が上昇するとCO2濃度も上がる(thermally-induced CO2)。この増加するCO2の主要な発生源は何だろうかというのが今回のテーマである。主にSalbyの講演とNOAA (アメリカ海洋大気庁)のサイトからのデータをもとに整理する。 炭素の同位体13C は安定で自然界に1.1% 存在する。一般に、次式で定義するδ13C を用いて13Cを含む化合物の割合を占めす。13C の存在量が小さければδ13Cの値も小さくなる。 (1) 地球上のCO2を追跡する場合13Cは良いトレーサーになる。光合成のプロセスでは植物は13CO2 よりも12CO2 を多く取り込む傾向がある。従って、植物や石炭などの化石燃料はδ13Cの値が平均値よりも小さい。化石燃料を燃やすと12CO2 がより多く放出されて大気中の13CO2 が希釈されることになる。従って、大気中のδ13Cの値は小さくなるはずである。 下図のNOAAのデータで示すように大気中のδ13Cの値はCO2の濃度が増すにつれて減少している。一年の短期間においてもδ13Cの値は、CO2の濃度変化とは逆の変化になる。 Fig.1 δ13Cの値とCO2の濃度の変化 話しを進める前にCO2バランスを見ておく必要がある。IPCCの報告によるとそのバランスは概略下図のようになる。年間、炭素基準で約60 GtのCO2が光合成で消費され、同量が植物の分解で放出される。ほぼ同量の約60 Gtの CO2が植物呼吸にかかわるがここでは省略されている。約90 Gtの CO2が海水による吸収、放出のプロセスにかかわる。化石燃料の燃焼によるCO2の放出は150 Gtのうちわずか5 Gt(約3%)である。 Fig. 2 CO2バランス(Salby の講演スライドから) またCO2サイクルにおけるδ13Cの変化は下図のように推定されている。海から放出されるCO2のδ13Cは大気中のδ13Cとほぼ同等である。化石燃料の燃焼から排出されるCO2と植物の分解から放出されるCO2のδ13Cはおよそ同レベルである。大気中のδ13Cの値はCO2の濃度が増すにつれて減少する。従って、上記のCO2バランスを考慮すると、化石燃料の燃焼よりも植物の分解による12CO2により13CO2 が希釈されδ13Cが減少する効果がはるかに大きいものと考えられる。 Fig. 3 各プロセスにおけるδ13C の推測値 北極に近いアラスカと南極の観測所におけるCO2とδ13Cの観測データを下図に示す。北極では南極よりもこれらの変化が大きい(スケールの違いに注意)。南極では植物が皆無なので植物の分解により発生するCO2がないためと解釈される。 Fig. 4アラスカバーロー観測所におけるCO2とδ13Cの観測データ … Continue reading

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