時間のずれのある温度とCO2の相関関係

以前示したように(→温度とCO2 変化の時間差について)、温度とCO2はCO2 の変化が常に気温の変化に 11 ~ 12 ヶ月遅れて変化することが確認された。そこで時間のずれのある温度とCO2の相関関係について、その時引用した論文をもとにもう一度整理しておきたい。論文は以下である。

Ole Humlum, Kjell Stordahl, Jan-Erik Solheim Global and Planetary Change 51, 100, 2013

2変数X,Yに相関関係があるかどうかを調べるには次式で定義される相関係数が使われる。

eq-1(1)

ここでxyは平均値である。相関係数が1に近いほど相関関係が強く、-1に近いほど弱いことを示す。マイクロソフトのExcelには相関係数の計算式Correlが組み込まれている。詳細はCORREL function – Microsoft Supportを参照されたい。時間のずれのある2変数の相関関係の模式図は下図のように表される。Inputを温度OutputをCO2で置き換えて考えることができる。

fig-1
Fig.1 時間のずれのある2変数の相関関係(instrumentationtools.com)

論文では、1980 年 1 月から 2011 年 12 月までの期間の COと温度との位相関係を調べている。ここでは以下のデータ例を示す。

  • 全球的に平均化されたよく混合された海洋境界層 CO2
    Global monthly CO2 data (NOAA), USA
  • HadCRUT3 地表気温
    the University of East Anglia and the Hadley Centre, UK
  • HadSST2 海面表面温度
    the University of East Anglia and the Hadley Centre, UK

これらのデータをプロットしたのが以下であって、上は月々の値で、下は12ヶ月平均の差の変化をプロットした図である。

 fig-2a

fig-2b

Fig. 2. CO濃度(green)と地表(HadCRUT3; red)および海面表面(HadSST2; blue)の温度の変化。上図は月々の比較。下図は12か月平均の比較。

各時間のずれに対して繰り返し数値計算をしたのが下図である。海面表面温度とCO2の場合は11か月の時間のずれの時に相関係数が最大値になる。

fig-3
Fig.3 時間のずれのある海面表面温度とCO2の相関係数

マイクロソフトのExcelではVisual Basicのプログラミングで計算を行うことができる。コードを書くところは通常は見えなくなっている。従来のExcelではAlt+F11でコードの画面を開くことができた。最新のExcel2021では、設定変更により”Developer”というメニューを加えて、その下にある”Visual Basic”をクリックすることにより開くことができる。Worksheet上のデータを読み込んで相関係数を計算する例を下記に示す。ThisWorkbook上にコードを書き込んでいる。この場合には、数多くのデータを読み込んで非常に多くの繰り返し計算が必要なのでExcelのVisual Basicは便利なツールである。

fig-4
Fig.4 ExcelのVisual Basicによる相関係数の計算例  (VBA Coding)

計算するにはWorksheetのマクロの表示をクリックして行う。

fig- 5
Fig.5 Excelのマクロのダイアグラム

下図はあくまで計算値の結果を印字した例である。この場合は元のデータの相関係数が0.7476で、一年のずれを考慮した場合の相関係数が 0.9891である。

fig-6
Fig.6 計算結果の表示例

温暖化に対するCO2の影響を考察する場合には、時間のずれを注意深く解析した相関関係を考察する必要がある。CO2が数10 ppm増加したから温度が上昇したというような単純なものではない。なお、時間のずれのある二変数の相関係数の計算には市販のソフトの活用もできるはずである。

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