温暖化の科学の出発点

- 太陽エネルギーと炭素バランス

温暖化または気候変動は最近の主要な話題のひとつで、メディアを通して ”気候変動”という語彙を聞かない日がない。しかし、その基本的な科学は明確ではない。例えば、国連の下部組織であるIPCC は400 ppm のCO2が地球の温度を上昇させていると言うがどこにも科学的な証拠は示されていない。また、1.5℃の温度上昇が深刻な気候変動を起こすと警告するが統計的な科学的証拠はない。

IPCCは数年に一度報告書を出している。その主張の根拠となるのは、科学的証拠がないので気候モデルとシミュレーションだけである。アメリカの投資家ウォーレン・バフェットの言葉に「散髪が必要かどうかは床屋に聞くな」というのがある。特定のターゲットに投資すべきかどうかは自分で決めろという。気候変動の問題も、科学的証拠がないのだから、「気候変動がCO2が原因で起きているのかどうかかはIPCCに聞くな」である。IPCCの主張に拘わらず、自分で科学的根拠に基づいて判断しなければならない。しかし、大気を中心にした地球科学は広範囲の学際的領域にわたるため、専門家にとっても一筋縄で行くものではない。IPCCの設立以来、「人為的なCO2排出が地球の温度を上昇させている」という結論ありきで進んで来たようである。IPCCの主張はさておいて、では科学的に考える出発点はどこなのだろうか。

ノーベル賞物理学者のファインマンは言っている。「理論がどれほど美しいとか、その人が頭が良いかは問題ではない。主張がデータと一致しない場合、それは間違っているだけである。」これは、人為的な地球温暖化の理論にも当てはまる。温暖化の基本的な科学はまだまだ明確ではないけれども、これまでこのブログで少し触れて来たように、以下のようないくつかのデータがある。IPCCの理論がこれらのデータと一致しなければその理論は間違いということになる。

  1. 大気中のCO2濃度の経時変化と温度の経時変化はある程度呼応しているが、温度変化が10ヶ月先行している。氷床コアの分析による長期の変化では温度変化が約1000年先行している。→ CO2 変化より先行する温度変化
  2. 地球へ入射する太陽エネルギーの約20%が赤外線として地表から反射される。そのうち3/4 が大気中の赤外活性物質に吸収される。大気中の赤外活性物質の95%はH2Oである。H2Oの赤外線吸収量はCO2に比べるとはるかに大きい。→ CO2の温室効果は非常に小さい?
  3. 地球上の炭素バランスに基づくと、CO2 排出量の 95% は自然発生源によるもので、人為的なものはわずか 5% である。→ 大気中のCO2の放出、吸収の速度論
  4. 衛星観測によると、CO2 の濃度が最も高いのは、工業地帯ではなく、アマゾンなどの工業化されていない熱帯地域である。→ 大気中のCO2 濃度は温度で決まる
  5. CO2濃度は、人為的な排出量ではなく、短期的な温度変化とほぼ相関して量が決まってくる[R2 = 0.93]。→ 大気中のCO2 濃度は温度で決まる

IPCC は、「産業革命以来、すべての CO2 濃度の増加が人間の活動によって引き起こされてきた。この増加したCO2は温室効果ガスであり、地球の温度を上げている。」と言う。しかし、この主張は上記の科学的事実を説明できない。従って、この主張は間違いである。最新のIPCCの報告書は、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と従来より踏み込んだ強い表現で断定した。いくら言葉を変えてもこれは疑似科学(pseudo-science)なのである。疑似科学に基づいた、画一的な価値観が”正義”であるかのように流布されているのである。脱炭素(カーボンニュートラル)、CCS (carbon capture and storage)など対応すべきフェイクストリーが作り上げられ疑似地球環境科学が形成されてきた。

国連の下部組織としての、数による疑似科学、政治的圧力の原因を考えることは大きなテーマである。ここではとりあえず、最初に地球上の太陽エネルギー炭素バランスについて整理し、科学的側面から考察していく。

地球のエネルギー収支をネットで検索してみると多くがNASAのデータを基にしている。一例を以下に示す。基本的に以前示した収支と同じである。反射率(アルベド)が30%、19%が雲を含む大気により吸収される。残りの51%が地面に吸収および反射される。51%のうち30%が地面から大気への伝導および水の蒸発などに消費され、21%が地面から赤外線として反射される。地面から反射される赤外線のうち6%が大気を素通り(大気の窓)する。残りの15%が赤外活性物質に吸収される。大気中の赤外活性物質の95%は水分子なので反射した赤外線の全量に近い量が水分子に吸収されることになる(Ref.)。

fig-1
Fig.1 地球のエネルギー収支

赤外活性物質への吸収以外にも、直接宇宙空間へエネルギーがロスするのではなく、19%が雲を含む大気により吸収されること、30%が地面から大気への伝導および水の蒸発などに消費されることに注目すべきである。これらのエネルギーは大気の温度上昇へ寄与するはずである。また、気温とは大気ガス分子の運動エネルギーであって、赤外活性物質が赤外線を吸収したからと言って大気の温度が上がるわけではない。酸素、窒素ガス分子の運動エネルギーへと変換する必要がある。CO2に吸収される15μmの小さな赤外線エネルギーがどこまで酸素、窒素の運動エネルギーへ寄与するのかも考える必要がある。

以下の図はIPCCの第6次評価報告書からである。エネルギー収支は前図と概略同じだが、下向きの赤外線(DLR: downward longwave radiation)が含まれている。下向き赤外放射とは、天空の全方向から地表面に入射する赤外放射(赤外線)である(Ref)。下向き赤外放射は、大気中の雲・水蒸気・二酸化炭素等からその絶対温度の4乗に比例して放射される。エネルギー収支には関係がないが、温室効果を示すためである。下向き赤外放射の実測値は非常に少ないので地球平均の値はモデルからの計算値だと思われる。

fig-2
Fig.2 下向きの赤外線を考慮した地球のエネルギー収支

下図は、大気を透過する放射光の強度である。上のカラムの左の赤い部分は大気を透過してきた太陽からのスペクトルで、反射光を除いた70-75%を示す。赤い実線は5525Kの黒体からの仮想的なスペクトルである。右の青い部分は地面から反射されて大気を素通りしたスペクトルである。地面から反射されるのは15-30%である。この10μmの大気を素通りする部分が大気の窓である。二番目のカラムが大気で吸収されるスペクトルである。三番目の水の吸収スペクトルと比較するとほとんどが水分子で吸収されることがわかる。

fig-3
Fig.3 大気とその成分の吸収スペクトル

エネルギー収支上ではCO2の温室効果はH2Oに比べると取るに足らない大きさであるが、地球上のCO2バランスからさらにCO2の温室効果について知見を得ることができる。CO2は植物に取り込まれると有機物へ変換するので、CO2バランスは炭素収支で考えることが一般的である。IPCCの報告によるとそのバランスは概略下図のようになる。年間、炭素基準で約60 GtのCO2が光合成で消費され、同量が植物の分解で放出される。約90 Gtの CO2が海水による吸収、放出のプロセスにかかわる。化石燃料の燃焼によるCO2の放出は150 Gtのうちわずか5 Gt(約3%)である。従って、人為的に排出されたCO2は自然界の中で希釈される。

fig-4
Fig.4 地球のCO2収支(炭素換算)

CO2の滞留時間はホールドアップ750Gtとサイクル量150Gtの値から約5年(=750/150)である。炭素同位体14C はトレーサーとして利用できるが、14CO2の分析からは8.6年と求められている(Ref)。また、人工衛星のモニタリングによる CO2 の観測結果と比較すると 2011年 に比べて、炭素換算で約 2.5 Gt の CO2 が熱帯地域から発生した。温度が上昇すると CO2 濃度が上がる (thermally-induced CO2)。13CO2の分析からはこの CO2 の上昇は主に高温における植物分解によるものと解釈できる(Ref)。

CO2のバランスは、光合成、海水への溶解度、有機物の分解により大きく影響を受ける。また、これらは温度によりコントロールされている。人為的に発生するCO2は自然界の数%以下であり、自然界のCO2に希釈されて数年の滞留時間で地球上を漂う

上記のエネルギー収支と合わせて考えると科学的出発点は以下のようになるだろうか。地球で反射される30%以外のエネルギーは何らかの形で地球へのエネルギーとして供給される。窒素、酸素に対し放射エネルギーは素通りする。しかし、大気に含まれる水、エアロゾルには20%が吸収される。残りの50%は地面を暖める。30%は熱伝導、水を媒介として大気を暖める。残りの20%は地面から波長の長いエネルギーすなわち赤外線として放射される。約5%の放射赤外線のエネルギーはそのまま宇宙へロスする。約15%は赤外活性物質に吸収されエネルギー交換により大気を暖める。その赤外活性物質の約95%が水である。CO2の濃度は400ppmであってその寄与は非常に小さい地面から反射される赤外線以外の寄与は上記から約50%と見積もられる。結構大きいはずであるが、定量的に評価した結果は見当たらない。今後の課題だろう。

CO2は光合成、海への溶解、動植物の分解という大きな自然サイクルからなる。化石燃料の燃焼などによる人為的なCO2排出量は、CO2の自然サイクルに比べると非常に小さな量で約3%である。光合成、海への溶解、動植物の分解プロセスは温度依存性が大きいので、CO2の循環サイクルは温度により変化する高温ほどCO2の循環サイクル量は増加するCO2の温室効果は水に比べると非常に小さく、人為的なCO2排出量も自然サイクル量に比べると非常に小さい。従って、エネルギーと炭素収支の考察から人為的なCO2の温室効果は非常に小さいことになる

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