Monthly Archives: August 2022

温度とCO2 変化の時間差について

地球表面が平衡状態にあれば温度とCO2 濃度の値はほぼ一定である。前回でCO2の濃度が温度によりコントロールされるということを述べた。平衡状態から温度が上がればCO2濃度も上昇する(Thermally-Induced CO2)。表面温度は均一ではないから、温度の高いところからより多くのCO2が放出され大気中で拡散、混合する。従って、温度の変化によりCO2の行き着く平衡状態への変化まで時間を要する。これがここで言う時間差(time lag)である。 系統的な大気中のCO2の分析は1958年にハワイの Mauna Loa で始まった。だから、正確なCO2濃度の値は高々過去70年以内しか得られない。それ以前のCO2の値は南極などの氷床コアサンプルの分析により得られる。但し、コアサンプル内におけるCO2の拡散、混合のプロセスは大気中のプロセスに比べるとはるかに遅い。長い time lag の結果となる。以下、Murry Salby の講演から時間差(time lag)についての考察の概略をまとめる。 下図はアイスコアサンプルの分析例である。推定されるCO2濃度と温度の変化を時間に対してプロットしてある。良い相関関係があるのがわかる。恐らくCO2と温度のどちらかが変化して、他方が追随したように思われる。卵が先かニワトリが先かの現象である。こうした場合は相互相関関数 (cross correlation function) を使って解析される。相互相関関数を使った解析結果では、Fig.2が示すように温度が1500年先行していることが分かる。 Fig.1アイススコアサンプルの分析例 Fig.2 アイスコアサンプルの相互相関関数による解析例 下図はCO2の観測が始まって以降の大気の温度とCO2の分析例である。相互相関関数を使った解析では、温度とCO2の相関は悪いものの温度が10ヶ月先行している(アイスコアのFig.2とは時間スケールがかなり異なる)。 Fig.3 大気の温度とCO2濃度の変化 Fig. 4 大気の相互相関関数による解析例 温度とCO2の相関関係の解析は以下のようにして得られる。詳細は論文での公表を待つしかないが、今のところ一連の講演の内容についての論文は出されていないようである。前回示したようにCO2の濃度変化は温度変化の積分で表せられる。CO2の濃度変化と温度変化を、それぞれ任意の周波数を持つ時間の三角関数で表し、フーリエ変換すると下記のように示される。位相のずれが時間差である。 Fig.5 相互相関関数による解析 さらにアイスコアの場合は、氷表面層での混合と内部でのCO2の変化プロセス(Non-conservative Influence)ついて考える必要がある。 Fig.6 氷中での想定されるプロセス Non-conservative Influence についての解析はやや複雑であるけれども、アイスコアの分析値と実際の推定されるCO2の値との比較は下図のようになると言う。アイスコアによるCO2の分析値はかなり過小評価されているらしい。例えば、下図のグラフによると2万年前(Frequency Kyr-1 = 0.05)のケースでは、当時の大気中の値は、分析したコアサンプルの値の倍の値だったということになる。数万年前のコアサンプルの分析結果はCO2が190-290 ppmという値が示されているが実際はもっと高かったかも知れない。 Fig.7 Non-conservative プロセスの影響 … Continue reading

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大気中のCO2 濃度は温度で決まる

以下は、Murry Salby の講演の一部からまとめたものである。なお、彼の 2011-2019 年の講演のYouTobeリストを下記に示す。 https://www.youtube.com/playlist?list=PLcApr99OxQEQPI11K0iaZBaL8Bwu5mduT (list) https://www.youtube.com/watch?v=sGZqWMEpyUM (2016) https://www.youtube.com/watch?v=b1cGqL9y548 (2018) https://www.youtube.com/watch?v=6xwGwSy5BYE (2019) 化石燃料から排出されたCO2の増加速度は2002年前後で350%上昇したが、大気中のCO2の濃度変化は、2002年前後を通し約2.1ppm/yrで一定であった。これは人為的に排出されたCO2の地球上の全CO2の濃度に与える影響が小さいことを示す。 Fig.1 また、下図で示すようにCO2排出量の変化速度(CO2の年間濃度変化率:緑の破線)は温度変化(青の実線)と良い相関がある。 Fig.2 従って温度変化に関係する定数をγとすると、CO2の濃度変化速度は次式で表される。               (1) すなわちCO2濃度は次式のように温度の積分値で決まることになる。温度がCO2濃度で決まるのではなく、CO2濃度が温度で決まることを意味する。             (2) これを裏付けるのが、CO2濃度と温度変化の時間的推移である。氷床のコア分析からCO2と温度の変化は下図のようになる。緑の破線がCO2の濃度変化で青の実線が温度変化である。   Fig.3 CO2濃度と温度変化には良い相関があるが、両者には1500年のずれがあった。すなわち温度が変化して1500年後にCO2濃度が変わってきたのである。 上記で示したようにCO2濃度は、温度という地球表面の状態(surface conditions)に関係づけられる。一方、炭素中に1.1% 含まれる同位体13Cの濃度変化は温度変化とは逆の関係になる。   Fig.4 150年の期間においても13C 濃度は温度の上昇と伴に減少している。これは、上記の結果と合わせて大気中のCO2濃度上昇が温度変化という自然サイクルにより支配されていることを示す。 Fig.5 人工衛星によるCO2の測定によると、高濃度のCO2はアマゾンのような人が余り居住していないところで、また工業地帯ではないところで観測されている。総じて、大気温度が高いところである。これもCO2濃度が主に温度によりコントロールされていることを示す。   Fig.6 まとめると、 1.  CO2濃度の変化速度は、大気の温度と良い相関がある。 2.  CO2濃度は大気の温度により決まる。 … Continue reading

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気候変動に対する定量的な考えの必要性

気象庁によると、日本の気温上昇は世界の平均に比べて大きい。気温の上昇にともなって、熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上の夜)や猛暑日(1日の最高気温が35℃以上の日)が増え、冬日(1日の最低気温が0℃未満の日)は少なくなっている。しかし、日本の気候変化が必ずしも地球の気候変化を表しているわけではない。 日本の面積は378,000 km2 である。地球の表面積は510,100,000 km2なので、日本の面積は地球全体のわずか700 area ppm (0.07%) である。700 ppm といういわば点における気候の変化で地球全体の気候を論じることは危険である。 日本の面積:           378,000 km2 (0.07%) 地球の表面積:     510,100,000 km2 (99.93%) 日本近海は太平洋の西の端に位置し、海流の通り道になっている。太平洋の10年規模振動(PDO: Pacific Decadal Oscillation)及びエルニーニョ現象、ラニーニャ現象(ENSO: El Niño-Southern Oscillation)の影響で海水温度、さらに地上温度が変わる。エルニーニョ、ラニーニャ現象では1,2年の短期間、PDOでは10年以上に及ぶ期間にわたり海水温が変化する。 また日本列島の上空を偏西風が流れている。その偏西風の蛇行の通路は変化していて気象を変える原因になる。以上、日本列島は地球の点である上に、気象的には特異な位置を占めている。 Fig 1 大気の大規模な運動 サンゴ礁が北上しているとか、サメが海水浴場で多く目撃されたというのを海水温の上昇のせいだと言う。しかし、点で起きている事象で地球温暖化を論ずることは危険である。大雪の原因を、地球温暖化の影響で冬爆弾低気圧の発生が増加しているとも言えない。 温室効果ガスの大部分がH2Oであり、CO2はわずか約3.6%である。全CO2のうち人為的に排出されているCO2は約3%である。CO2は大気中に約400ppm存在するから、人為的に排出しているCO2はわずか1-2 ppm占めるのみである。 Fig.2 0.7℃/100年という温度上昇率が大きくて、危険なのかどうかは主観的な問題ではなくて、実際の自然変化に照らして実証的に判断すべきである。私が現在住んでいるシカゴは、気温は一年で-15℃から30℃まで変化する。一日で15℃変化することもある。明治維新から現在まで約1℃温度は上昇した。その間、大きな気候変動で破滅的な事態になったわけではない。 3000年前に栄えた4大文明の時代は、現代の温暖期より暖かだった。GISSによる温度変化のグラフを一日の温度変化のスケールで書くと下の右図のようになる。左図と比較すると随分違った印象を与える。だから、0.7℃/100年という温度上昇率は決して大きくはない。むしろ、温度の変化は明治維新以降、驚くほど安定していると言える。 Fig.3    

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エネルギー貧困

  石炭は、世界のエネルギーの約 30% を供給し、世界の炭素排出量の約 44% を生み出していると言われる。また世界のエネルギーは85%が石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料からなる(2018)。   Fig. 1 World total primary energy supply by fuel, 2018 (Source: BP, 2019) 化石燃料の各国の消費量は下図のようにで、中国が圧倒的に多い。 Fig.2 2017年の各国の化石燃料の使用量 石炭の消費量はかって化石燃料の50%を占めていたが現在は30%まで下がっている。石炭は燃焼発熱量あたりのCO2の発生量が多いためで、CO2発生量の少ない天然ガスに置き替わりつつある。 Fig.3 化石燃料の消費量の変化 しかし、石炭の価格は低いが石油、天然ガスの価格は高い。 Fig.4 原油、一般炭、天然ガスの価格の推移 下図は石炭の消費量と確認埋蔵量示したものである。石炭の埋蔵量は非常に多いのが分かる。また石炭は、石油と違って世界中に広く分布している。 Fig.5 石炭の消費量と確認埋蔵量の比較 以上石炭は安く、偏りが小さく世界に広く分布する。この安い燃料を高いエネルギー源に変換することは、エネルギー価格が上昇することを意味する。世界中で約 12 億人が電気を利用できていない。28 億人が木炭、木材、またはその他のバイオマスを燃やして家の料理や暖房を行っている。エネルギー価格の高騰はさらにこのような「エネルギー貧困」を増すことになる。温暖化を科学的な証拠がない CO2 の増加のせいだと決めつけて政策を実施するのは如何なものだろうか。 Fig.6 エネルギー貧困の分布 下図は参考のために、日本のエネルギー源の変遷を福島原発事故前後で示す。 Fig.7 日本のエネルギー源の変遷

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CO2の温室効果は非常に小さい?

  以下は、太陽エネルギーバランスの例である。太陽エネルギーの30%は地球で反射され70%が地球圏内に達する。70%のうち19%が雲、水蒸気、エアロゾルを含めた大気で吸収され、30%が地球表面を暖めたり、水(海)を蒸発させたりするのに使われる。残りの21%は表面から反射される。21%のうち6%が直接地球圏外へ出てゆく。15%が赤外活性物質に吸収される。大気で吸収されたエネルギーと地球表面を暖めたエネルギーは、大気の運動エネルギーを高める。 赤外活性物質は、3原子以上からなる分子で、大気の場合多くがH2OそしてCO2がそれに続く。赤外線を吸収してエネルギーが高くなった分子は大気の分子と衝突するなどして大気分子の運動エネルギーを増す。H2OやCO2等のガスが温室効果ガスと呼ばれる。 S.入射太陽エネルギー: 100% A.大気によって反射される分:6% C.雲によって反射される分:20% D.地球表面で反射される分:4% R.雲と大気から宇宙空間に放射される分:64% B.大気に吸収される分:16% F.雲に吸収される分:3% G.熱伝導と上昇気流による分:7% H.水蒸気の潜熱(蒸発熱)によって雲と大気に運ばれる分:23% K.大気に吸収される地球からの放射分:15% E.地球から直接宇宙空間に放射される分:6% L.陸と海に吸収される分 H2Oの赤外線吸収量はCO2に比べると桁違いに大きい。加えて大気中に大量に存在する。大気中のH2Oの量は条件によって大きく変わるが1-3%、CO2は400ppmとすると二桁違う量である。下図で示すようにH2Oの赤外線の吸収量が、25倍以上と言えるかも知れない。    Fig. 大気中ガスの温室効果の比較 上記の太陽エネルギーのバランスから、地球表面から放射された赤外線が大気中の赤外活性分子に吸収される量は、地球に到達する太陽エネルギーの約20%( = 15/70)である。20%のうちCO2よりもH2Oが圧倒的に多く赤外線を吸収するものと考えられる。従って、CO2の温室効果の影響はかなり小さいのかも知れない。太陽エネルギーのバランスと H2O や CO2 の量、赤外線の吸収量の考察から CO2 の量が数 10 ppm 変化しても温度変化への影響はないものと考えられるのだが。

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温室効果は大気とCO2の両方が必要

温室効果がないときの地球の表面温度は約‐18℃である。しかし、実際には約15℃でありその差が温室効果と言われる。気温が15℃というのは、大気の構成成分の窒素と酸素が約15℃に相当する運動エネルギーを持っていることを意味する。因みに、上空ほど大気の密度は小さくなる。従って大気の運動エネルギーは上空ほど小さく、温度は低くなる。 以下NASAのデータをもとに太陽エネルギーバランスを考える。太陽エネルギーの30%は地球で反射され70%が地球圏内に達する。70%のうち19%が雲、水蒸気、エアロゾルを含んだ大気で吸収され、51%が地球表面に達する。51%のうち30%が地球表面を暖めたり、水(海)を蒸発させたりするのに使われる。残りの21%は表面から反射される。反射した電磁波は入射した電磁波よりエネルギーが低く、この場合は赤外線の領域である。21%のうち6%が直接地球圏外へ出てゆく。15%が赤外活性物質に吸収されて大気の運動エネルギーを増加させる。 赤外活性物質は、3原子以上からなる分子で、大気の場合多くがH2OそしてCO2がそれに続く。赤外線を吸収してエネルギーが高くなった分子は大気の分子と衝突するなどして大気分子の運動エネルギーを上げる。   S.入射太陽エネルギー: 100% A.大気によって反射される分:6% C.雲によって反射される分:20% D.地球表面で反射される分:4% R.雲と大気から宇宙空間に放射される分:64%   B.大気に吸収される分:16%   F.雲に吸収される分:3%   G.熱伝導と上昇気流による分:7%   H.水蒸気の潜熱(蒸発熱)によって雲と大気に運ばれる分:23%   K.大気に吸収される地球からの放射分:15% E.地球から直接宇宙空間に放射される分:6% L.陸と海に吸収される分 従って温室効果ガスと言われるH2OとCO2だけでは地球の温度は変わらないし、大気の主要成分である窒素と酸素だけでも十分暖まらない。大気にH2OとCO2 が含まれていることが必要である。  下図に大気圏に突入前と突入後の太陽のスペクトルを示す。電磁波が赤外領域でH2OとCO2により吸収されることがわかる。 (http://denkou.cdx.jp/Opt/PVC01/PVCF1_4.html) 地球表面から放出される電磁波のスペクトルとの比較は下図で示される。放出される赤外線の青い部分は大気で吸収されずにそのまま出ていく。大気の窓と言われる。大気の窓より波長の長い領域にH2OとCO2の吸収域がある。KiehlとTrenberth は大気の窓から出ていく赤外線を入射光の約10%と見積もっている。上記の地球から直接宇宙空間に直接放射される分6%もほとんどが大気の窓から出て行く量と思われる。その場合は上記のバランスによると、現在以上にCO2が増えてもCO2のさらなる温室効果はないということになる。 http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Atmospheric_Transmission.png

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異常気象(台風、竜巻、山火事、降雨量、干ばつ、猛暑、大雪の頻度等)が増えているという統計データはない。

Fig. 1 日本における200 ミリ以上の年間日数の変化 Fig. 2  日本における30年に1回の値を超えた地点の割合 Fig.3 台風の発生数(データは気象庁) Fig.4  アメリカにおける竜巻の変化、1954-2014 Fig.5   世界の降雨量の変化, 1901–2021 Fig.6  世界の焼失面積の変化

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