自然放出と人為放出のCO2

温度と CO2 の相関関係を考える上で、大きな誤解があるものと思われる。 CO2 の発生源についてである。今も増え続けている CO2 は、その全てが燃料を燃やして発生した人為起源の CO2 (anthropogenic CO2) だけではない。これまで述べてきたことを整理すると次のようになる。

  1. 炭素サイクルの質量バランスにおいて人為起源の CO2 は 5% 以下である。
  2. 人為起源以外の 95% 以上の CO2 が自然サイクルに関連する。
  3. 温度と CO2 濃度には相関があるが、温度変化が先行する。
  4. 温度変化は CO2 の正味の変化(たとえば一年ごとの濃度の増減)と良い関係がある。
  5. 温度が上昇すると自然サイクルによる CO2 の放出が増える。

これらの事実に基づくと、人為起源の CO2 が地球を温暖化しているということは誤りになる。地球上には下の写真で示すように動植物で溢れる。最初の写真は昨年訪れたアリゾナ、フェニックス近郊のサボテン公園、そして次の写真は多くのカナダ雁が凍った川面で休んでいるところである。

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Fig.1 Cactus Park in Scottsdale, AZ (10/28/2021)

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Fig.2 凍った川の水面で羽を休めるCanadian Geese (2/24/2015)

これらの生物体は、発生してもいつか死滅、分解して生物体として平衡状態を保つ。この分解過程は日々の生活の中では目立たないので、大した量ではないと思うかもしれない。しかし、成長する植物と同量の朽ちた植物が分解していくのである。IPCC の炭素バランスを見てみると、循環している炭素のおよそ 1/3 の 60Gt が植物の分解による量である。

微生物による分解のプロセスは、酸素が共存する好気性分解と酸素のない嫌気性分解に分けられる。前者では CO2 が、後者ではメタンが発生する。また窒素を含有する廃棄物を含む土壌では N2O が発生する。分解生成物のCO2、メタン、N2O はいずれも温室効果ガスである。大気中のメタン、N2Oの濃度は CO2 に比べるとはるかに小さいものの地球温暖化係数 (GWP: global warming potential) は CO2 に比べると大きい。

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Fig. 3 USA における CO2、メタン、N2O の排出割合

上記の分解プロセスは高温ほど速いので、CO2、メタン、N2O は高温ほど多く発生する。前々回述べたように、温暖化による気温上昇で発生するのが thermally-induced CO2 である。自然サイクルの CO2 は人為的な CO2 よりはるかに多いので、温度の変化に追随して放出する CO2 の量に大きく影響する。時間的なずれは温度変化よりも 10 ヶ月遅くなる。同様に、分解して発生するメタンも温度変化よりも遅く追随して放出される。従って、下図で示すようにメタンも CO2 と同様に温度の変化と良い相関がある。

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Fig. 4 氷床サンプルから得られた CO2、メタンの経時変化(Salbyのスライドより)

N2O の場合は、詳細な温度との相関データはないが、下図で示すように温暖化とともに濃度が上昇することが分かっている。

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Fig. 5 CO2、メタン、N2O濃度の変化

19世紀に小氷河期が終わり気温が上がり始めたとすれば、CO2 濃度も温度と共に放出量が増え続けているはずである。これが上記五つの科学的知見に沿う矛盾のない解釈である。CO2 のサイクルは自然放出と人為放出からなり、自然放出の CO2 が圧倒的に多いことを考慮する必要がある。次回ではこのプロセスを定量的に考察する。

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