現代の温暖期の整理 – CO2 濃度変化は原因ではなく結果である

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産業革命以降、人為的な CO2 の排出量が増えてきた。19 世紀後半になると、小氷河期が終わり少しずつ温暖化が始まった。気温上昇とともに自然界の CO2 の排出も徐々に増えてきた。炭素バランスによると、自然界の CO2 排出量が圧倒的に多く、人為的な CO2 排出量は 5 % 以下に過ぎない。CO2 のバランスは、人為的排出と自然の排出からなる排出プロセスと、吸収プロセスからなる。大気のプロセスを解析すると、自然界の正味の CO2 年間排出量は温度変化により決められる。また吸収プロセスは、CO2 濃度に比例する一次速度式になる。産業革命以前の CO2 濃度は 280 ppm だったが、2020 年の CO2 濃度は 130 ppm 増えて 410 ppm である。解析によると、増加分 130 ppm のうち、18 ppm (14%) が人為的な増加分、そして 112 ppm (86%) が自然の CO2 増加分である。さらに、温度の変化が CO2 濃度の変化より 10 ヶ月先行する。IPCC および多くの人々が、燃料の燃焼などによる人為的な CO2 排出が温暖化の原因だと主張する。しかし、事実と解析結果は、逆に温度が先行し CO2 は温暖化の原因ではなく、結果だということを意味する。CO2 の濃度上昇は、我々にとり害ではなくむしろ利益をもたらす。地球の歴史で辿れる過去数 10 万年において、温暖化および寒冷化は自然サイクルであった。現代の温暖期もその例外ではない。

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次の講演と論文で見るように Murry SalbyHermann Harde が、大気中の CO2 Kinetics について先駆的な研究を行った。彼らの研究を中心に整理していく。

1)  M. Salby, https://www.youtube.com/watch?v=HeCqcKYj9Oc 2013
2)  M. Salby, https://youtu.be/3q-M_uYkpT0 2016
3) H. Harde, Global and Planetary Change 19, 152, 2017
4) H. Harde, Earth Sciences 1, 8(3), 2019

大気温度は、大気ガスの運動エネルギーで決まる。その関係は基本的な分子運動論から (1) 式のように導かれる。地球表面から反射した赤外線により、大気温度が上昇するためには、下図のように赤外線で励起した赤外活性分子 (H2O と CO2) と大気分子 (N2 と O2) が衝突してエネルギーを交換する必要がある。励起した赤外活性分子が再び赤外線を放出して基底状態に戻るプロセスも考えられる。しかしこのプロセスでは、大気ガスの運動エネルギーは変わらないので大気温度は変わらない。

kT = 3/2・mv2                                     (1)
(k = ボルツマン定数、T = 温度、m = 分子の質量、v = 分子の速度)

fig-1
Fig.1 赤外線吸収した H2O と N2 分子との衝突

赤外活性分子である H2O と CO2 は温室効果ガスである。濃度は、H2O が数 % であり 400ppm の CO2 より二桁大きい。分子当たりの赤外線の吸収は CO2 の方が大きいが、大気全体としては H2O の方がはるかに大きい。大気温度は、空気中の H2O ガスによりコントロールされるとも言える。

IPCC による地球上の炭素バランスから、化石燃料の燃焼により排出する CO2 はわずか 5% 以下である。残り 95% 以上は自然サイクルで排出した CO2 である。

fig-2
Fig.2  自然による CO2 と人為的な CO2 排出量の割合(%)

fig-3
Fig.3  地球上の炭素バランス  (by IPCC)

自然の CO2 排出は温度依存性がある。これは、下図で示すように自然の CO2  排出の速度変化(便宜的には年ごとの CO2 の変化量)と表面状態との間に良い関係があることから確認できる。表面状態は温度と湿度で決まる。温度だけでも 0.8 以上の相関関係、湿度を考慮すると 0.9 以上の相関関係がある。すなわち、自然の CO2 排出量は温度により決まる。自然の CO2 排出は温度により変わり、人為的 CO2 の排出量を凌駕する量である。

fig-4
Fig.4  正味の CO2 排出量と温度との相関 (by Salby)

全CO2排出量の 95% 以上を占める自然の CO2 は温度で決まり、下図で示すように CO2 濃度の変化が温度変化より遅れて変化する。氷床コアサンプルを解析した結果では、温度が先に変化して約 1,000 年後に CO2 濃度が変化した。大気の分析結果では、温度が先に変化して約 10 か月後に CO2 濃度が変化する。氷床コアサンプルと大気サンプルの時間のずれの違いは、ガスと固体中における CO2 の拡散と混合過程の差と考えられる。

fig-5
Fig.5  CO2 濃度 (green) と地表 (HadCRUT3; red) および海面表面 (HadSST2; blue) の温度の変化 (Ole Humlum et. al. Global and Planetary Change 51, 100, 2013)。

自然の CO2 の排出速度と吸収速度は、簡単な物理化学のプロセスで近似的に解析できる。それらのプロセスが、CO2 の濃度変化の経時変化を決める。自然の CO2 の排出速度と吸収速度は、CO2 発生源の濃度また大気中の CO2 濃度に比例する。例えば、自然の CO2 の吸収速度は典型的な一次速度式で表される。

     eq-2         (2)

           eq-3      (3)

k は定数であり逆数が滞留時間 τ である。C0  は初期の CO2 濃度である。この式は、14C の吸収速度の結果から確かめられた。自然の CO2 の排出速度と吸収速度は温度により変わるので、CO2 の滞留時間も厳密には温度依存性がある。この場合の滞留時間は 8.6 年だった。

fig-6
Fig.6  1963 年以降の大気中の 14CO2 濃度の減少変化 (by Salby)

CO2 の自然プロセスでは (2) 式に CO2 の排出プロセスが加わる。従って、

   eq-4             (4)

eq-5(5)

eN, eA はそれぞれ自然の CO2, 人為的な CO2 濃度変化量 (ppm/yr) である。数値計算の実例は上記論文の 3) などを参照できる。産業革命以前の濃度は280ppm だったが、2020 年の CO2 濃度は 130ppm 増えて 410ppm であった。(5) 式の解析によると、増加分 130ppm のうち、18ppm (14%) が人為的な増加分、そして 112ppm (86%) が自然の CO2 増加分である。下図に示すように、IPCC の解釈では増加分 130ppm の全てが人為的な増加分となっている。

fig-7
Fig.7  自然の CO2 濃度 (ppm) と人為的 CO2 濃度 (ppm) の比較 (2020 年)

氷河期においては、温度が大きく変わってもCO2濃度は 200-280ppm の間で余り変化しなかった。現在を含めて両者の間に規則的な関係はあるのだろうか。上記の論文 3) によると、氷河期以降の温度と CO2 濃度の関係は、下図に示すように表される。温度が 15℃ 以上では、CO2 濃度の温度依存性が大きいことを示す。例えば朽ちた植物などの分解速度が 15℃ 以上でより活発になり CO2 排出量が増えるのかもしれない。因みに、この曲線はカーブフィッティングで (6) 式のように表される。

fig-8
Fig.8  氷河期以来の CO2 濃度と温度の関係

eq-6  (6)

ここで Cco2,G 、TE、 TG  はそれぞれ氷河期の CO2 濃度、温度、氷河期の温度で、χ γ はパラメータである。現在は氷河期に比べると、温度の少しの変化で CO2 濃度が大きく変わることを示す。

以上、科学的事実と解析結果は、温度変化が先行し CO2 は温暖化の原因ではなく、結果だということを意味する。CO2 の濃度上昇は、植物の生育にとり有益であり、我々にとり害ではなくむしろ利益をもたらす。地球の歴史で辿れる過去数 10 万年において、温暖化および寒冷化は自然サイクルであった。現代の温暖期もその例外ではない。産業革命以後、小氷河期を抜け出し自然サイクルとしての温暖化が始まったものと解釈できる。

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