トピックス (2)

02/03/2011


● 人工衛星による温度測定

人工衛星による対流圏の温度測定は 1978 年に始まった。ラジオゾンデによる観測は 1958 年に始まったのだが、観測地点が限られ高度などが統一されていなかった。人工衛星は温度を直接測るのではなく、特定波長の電磁波を測定して温度に換算する。グループにより解析結果が異なる。結果は、+0.07 °C/10 years 〜 +0.17 °C/10 years の範囲である。(1, 2)

1400-1800 の間は寒冷期だった。寒冷期が終わり 1800 年以降温暖化が始まった。平均して 0.5℃/100 year の割合で上昇している。小さな周期がある。例えば1880-1910, 1940-1975 年にかけて温度は下降した。次の周期は 2000 年頃にはじまるものと予想されている。(3) 事実、人工衛星のデータは、上図で示すように2000 年以降、温度が下降に転じたとも読み取れる。(4

なお、衛星からの日々の温度測定結果は Roy Spencer のサイトで見ることができる。(5)

(1) http://www.remss.com/msu/msu_data_description.html
(2) http://en.wikipedia.org/wiki/Satellite_temperature_measurements
(3) S. Akasofu, "Natural Components of Climate Change During the Last Few Hundred Years"
(4) R.A. Kerr, Science 326, 28 (2009), "What happened to global warming? Scientist say just wait a bit." 
(5) http://discover.itsc.uah.edu/amsutemps/

最近の更新されたデータの一覧は、 JunkScience.com を参照。

過去 120 年の温度と CO2 の相関は下記のようである。CO2 の濃度は単調に増加しているが、温度は単調には上昇していない。1880-1910, 1940-1975 の期間で温度が下がった。


● IPCC の組織とレポート

United Nations 国際連合
    The World Meteorological Organization ( WMO )
世界気象機関
    The United Nations Environment Program (UNEP) 国際連合環境計画
       
Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC)
気候変動に関する政府間パネル  
       
United Nations Framework Convention on Climate Change (UNFCCC)
気候変動に関する国際連合枠組条約
           
The Conference of the Parties ( COP ) 気候変動枠組条約締約国会議

 IPCC

IPCC のレポート

     全レポート
    第三次レポート (2001) ●英文要約, ●日本語要約
    第四次レポート (2007) ●英文要約, ●日本語要約
    (日本語は気象庁のサイトを参照。)

参考 (日本の研究組織)

     環境省 Ministry of the Environment
           
国立環境研究所 National Institute for Environmental Studies  
                地球環境研究センター
       
国土交通省   
           
気象庁 Japan Metrological Agency
                地球環境・気候


● 海水表面温度と大気圏温度の関係

2010 年は 1998 年に次いでの暑い夏になった。海水表面温度は 2010 年の初めから下がり続けている。大気圏温度は、海水表面温度から数ヶ月遅れて変化するので、夏とは打って変わって平年より寒い冬が到来するかも知れない。

下の図は海水表面温度と大気圏温度を同じ時間スケールで比較したものである。Roy Spencer のサイトからのグラフを変形してある。


● CO2 濃度と植物の成長との関係

炭酸ガスは安定な化合物のひとつである。炭素、酸素とも外殻電子を過不足なく分かち合っていて、化学結合が強い。通常の条件では、反応性は非常に小さく不活性ガスと考えても良い。密閉した部屋で炭酸ガス濃度が上がると、炭酸ガスのために危険なのではなく、酸素濃度が低くなって酸欠状態になるからである。

CO2の濃度が高いほど植物の成長は速くなる。下の写真は、異なるCO2濃度での植物の成長の違いを写したものである。(Read More)

その他、多くの研究結果あるが、Petition Project の報告に手際よくまとめられている。最初のグラフは、USA の四ヶ所にあった松の年輪から成長速度を 20 年ごとの平均の偏差をプロットしたものである。次のグラフは、CO2 濃度を変えて実際に植物の成長速度を観察したもので、 279 の論文からの結果である。いずれもCO2濃度が高いほど直物の成長速度が速いことを示す。

CO2 は植物にとり不可欠であり、その濃度が高いほど速く成長する。我々を含めてすべての動物は、食物連鎖で植物に負っている。炭酸ガスを公害物質と考えるのは、心外である。

CO2 を 25% 削減。「どうして?」と問いたい。莫大な金を掛けて CO2 を削減する根拠を見い出せない。CO2 を削減することは、ある CO2 濃度のレベルに達する速度を遅くすることで、10年掛かるところを数年延ばすだけである。


● CO2 の放出量と濃度の関係

炭酸ガスのデータはテネシーにある U.S. Department of Energy (DOE) の Oak Ridge National Laboratory に属する Carbon Dioxide Information Analysis Center (CDIAC) でまとめられている。 化石燃料からの炭酸ガスの放出のデータは Web サイトからダウンロードできる。データの部分をテキストファイトとして保存し、Excel でスペースを delimiter としてオープンすれば、簡単にグラフを作成できる。

このデータを大気圏の容積で割ると濃度に換算できる。このデータは、 下図 のようになる (by Roy Spencer)。

CO2の全放出量の半分が大気中のCO2 の増加に寄与するということになる。CO2 の放出量にかかわらず約半分である。残りの半分は、植物に吸収されるとか、海に溶けるとかしてバランスしている。これは Carbon Sink と言われ我々の地球が CO2 を何らかの形で保存する力を持つ。

尚、23 年に及ぶ各高度のCO2の測定結果から、赤道付近の CO2 の吸収量は高緯度の結果に比べてはるかに大きいことがわかった。(Science Vol. 316, 1732-1735, 2007)



● 温度の規格化

温度は、地球時間では ±5℃ の範囲で変動してきた。しかし、温度の変化を論じる場合温度のスケールがまちまちである。過去、120 年の温度変化のデータが良く示される。その場合 ±0.5℃ のスケールとなっている。地球にとり、ある一点をことさら拡大して見ているわけである。±0.1℃ の変化も我々にとり大きい変化なのだが、拡大したデータを基に異常だとみなすのは、地球に対してふさわしくない。


温度のスケールを同一にして比べるべきである。下の図は 420,000 年のスケールを基に過去 2,000 年、120 年の温度の変化を並べた。420,000 年の間温度は12℃ から 22℃ の範囲で変化した。これを 0 から 100 としても良い。規格化と呼ばれ、パラメータを比較する場合の通常のやり方である。


地球の温度の変化の原因は数多くありどれが主要な因子なのか良く分かっていない。そこで、420,000 年の温度の変化を自然のサイクルとしておく。この図から言えることは、過去 120 年の温度変化は異常ではなく自然サイクルの範囲内である。


これらの図の上に、物理量の異なる二酸化炭素の濃度変化を任意に広げたり、ずらしたりして比較するから、これまた混同が始まる。


 


● CO2 はどこまで増加可能か

CO2 は究極的にどこまで増加するだろうか。採掘が可能な全化石燃料を燃やしても、1,000 ppm を越えることはないだろうと思う。以下はその根拠である。

CO2 は人類の歴史上は比較的一定だった。しかし、地球の歴史上では下図 に示すようにかなり変動したものと推定されている。現在より3億6700万年前から2億8900万年前までが石炭紀と呼ばれ多くの化石燃料が生成された時期である。図から、石炭紀の前は CO2 が 3000-4000 ppm であったものとする。

可採埋蔵量の確認埋蔵量に対する割合は、石油 が 50 % ぐらい石炭 が 10 % ぐらいと見積もられている。 石炭の可採埋蔵量は、 BP (Britich Petroleum) のデータによると石油の 4 倍である。従って、全ての化石燃料を燃やして, CO2 に変換すると石炭紀の前の CO2 のうち 25% が大気中に戻ることになる。その量は多くて 1000 ppm である。


前へ 次へ