ケンタッキー馬公園

● バーボンの菓子箱買えばダービーの馬走りおりここはケンタッキー

 ケンタッキーと言えばウイスキー、そして有名なダービーレースである。州都レキシントンの北西の郊外に「kentucky Horse Park」がある。1200エーカー(約5km)の広々とした公園内に、千頭以上の馬が生活している。馬博物館、国際馬博物館、レース場、練習場、馬舎、スタジアム、遊園地、乗馬など色々なショウやツアーもある。有名なダービー馬の銅像が要所に立ち、レストランやギフトショップも完備している。そして、一角には生涯を終えた馬の墓地苑もある。

● 前方は臀部(しり)ばかりなるトローリー馬車にゆられて公園めぐる

 早朝一番、九時に二頭立てのトローリー馬車に乗って公園内のツアーに出発した。広大な馬公園の回りを見渡す時、前方は大きな馬の臀部で遮られてしまい、改めて馬の大きさに気づかされた。女性の御者の手短で厳しい指示にも、馬は従順にそして黙々と歩いた。十六人を運ぶ蹄のリズミカルの音が心地よく響いていた。

● 栄光の過去のビデオの流れいる下にダービーは繋がれて立つ

「Hall of Champion」には、歴代のダービーのチャンピオンたちがいた。引退をして、2009年にカリフォルニアからこの公園に入った”Be a Bono”が観客の前に姿を現した。十四回の勝利をしたサラブレッド、鼻の微妙な差で2位になること2回というエピソードも添えられ解説が続く。馬の頭上ではかつての華々しい己のレースが展開している。その下で客に向かって2回、3回と円を回り、均整のとれた全身を見せてくれる。手綱に繋がれないで風を切り、思いっきり野原を走りたい日もあるだろうか。澄んだ瞳を見ているとそんなことを思った。

● 馬公園に十六連勝のシガーおり栗色の毛はいまだ兵(つわもの)  

 “Cigar”は十六連勝を果たしたダービー馬である。幾たびのケガをも克服し、約$10ミリオンの賞金を獲得した。1996年に引退したが、輝くような栗色の全身、眉間に剣の形の白毛があり、引き締まった体には未だ勇壮感が漲っていた。”Da Hoss”や “Funny Side” 等のかつての競争馬が続き、ショウが終わると、己の名前の付いた個室へと引き上げていった。室内にはたくさんの藁が敷かれ、清潔で、世話をする人達の細やかな愛情で満たされていた。

● その瞳にヒトを映して静かなる老サラブレッドの鼻筋に触る

レースを走りに走った馬たちは、人間に夢を与えて華麗な舞台を去り、公園で安らかな晩年を迎えていた。何度もケガや痛みを体験し、過酷な練習に耐えぬいたサラブレッドたちは、気品に満ちていた。最後に与えられた休息の地で、豊かな自然と共に生き、これが自分の任務と心得ているのか、訪れる人々に優しい眼差しを向けてきた。馬公園には、人間と馬とのドラマがあり、馬は人間にとって友情以上の絆であることをその瞳が示していた。

● 老いたれど瞳涼しきサラブレッド馬公園の風を聞きおり


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