何もしないことこそ真の温暖化対策 - 1

人為的温暖化現象」という仮説が盛んに唱えられ出して久しい。その原点をIPCCが設立された1988年だとすると、30年弱になる。IPCCの連絡会議とも考えられるCOPも今年は21回を向えた。20年を超えるわけである。思えば、エルニーニョ現象で最高温度を記録した1998年が、仮説のクライマックスだった。エルニーニョの前後はラニーニャ現象が起きるのが通常で温度は下がる。だから、1998年より少し遡ってデータを眺めてみると18年以上にわたり温度は上昇していない。横ばいである。

仮説を肯定する人々は、この18年の間に起きた、低温、台風、大雪、猛暑、日照り、長雨、といった通常より大きな気候の変化を気候変動あるいは異常気象と称して地球温暖化のせいにする。すなわち、全てがCO2のせいだとする。しかし、実際にはこの18年以上にわたり温度は上昇していないのである。

この18年の間、2002年ごろを境にして化石燃料の使用量は3倍以上に増えた。しかしCO2濃度の上昇速度は変わらない。それなのに、化石燃料の使用量を削減しなければ地球環境に悪いという。発電コストを無視して、再生可能エネルギーの割合を増やせという。数億の飢えている民がいるのに、食料からアルコールを作るべきだという。

人為的温暖化仮説」の科学的根拠は非常に希薄である。なぜIPCCが設立されてから「人為的温暖化仮説」が社会を巻き込んで疑似科学になってしまったかは、今後の社会科学の大きなテーマである。

CO2の排出量、化石燃料の使用、代替エネルギーの開発、環境への影響について原点に返って考え直す必要があるだろうと思う。

まず、第一に「CO2排出削減を今しなければ手遅れになるのではないか」という問題を考えてみたいと思う。科学的な背景に主観的な要素が入ってくる難しい問題である。一つの考え方は、日本の公害問題とその対処法をもう一度振り返って、比較してみることがカギになるかも知れない。手遅れになった例が水俣病である

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石原慎太郎 土下座写真
環境庁長官だった頃、 水俣病患者の直訴文を「IQの低い人が書いたような字だ」
患者一般に関しては「偽患者もいる」 
石原慎太郎都知事暴言集http://matome.naver.jp/odai/2129161684892120001
http://blog.livedoor.jp/uwasainfo/archives/1621623.html

Fig.1 土下座する環境庁長官だった石原慎太郎氏

日本で発生した公害の中でも水俣病は公害病の原点である。1956に熊本県水俣市で水俣病の発生が確認された。翌年熊本大学は、原因物質は有機水銀だという発表を行った。1959年に有機水銀説が熊本大学や厚生省食品衛生調査会から出されると、チッソは「工場で使用しているのは無機水銀であり有機水銀と工場は無関係」だと主張した。

アセチレンからアセトアルデヒドを合成するプロセスで触媒として無機水銀(硫酸水銀)が使用された。これと同様のプロセスが国内にいくつかあったのだが、水俣病の症状が出たのは、当時は水俣近辺だけだった。そこで化学工業界をあげて有機水銀説を攻撃した。すなわち、チッソ側を擁護した。メチル水銀化合物と断定されたのは、1968である。今ではガスクロマトグラフィーでメチル水銀を短時間に同定することができる。

実はチッソ内部でも早い時期から動物を使って、排水との関わりが実験されていた。排水が動物に奇病を起こすことがわかっていたが公表されることはなかった。なぜメチル水銀が生成したのか当時の化学ではわからなかったが、水銀と水俣病の因果関係は十分推定できた。排出されていた水銀化合物がメチル水銀だと確定できなかったばかりに、チッソは水銀が水俣病の原因だとするのは曖昧な推測に基づいた結論だと主張し、対応が遅れたのである。

メチル水銀が生成する化学反応機構は現在もまだわかっていない。無機水銀(硫酸水銀)を触媒に使用してアセチレンからアセトアルデヒドを合成するプロセスは、世界中にいくつかある。チッソは戦前からこの合成プロセスを行っていた。しかし、人間に害が出始めたのは戦後の1956年あたりからだった。メチル水銀の詳細な化学は未解決のままである。

温暖化問題も、見方を変えれば、水俣病と同じように思える。温暖化の原因がCO2であるという証拠はない。CO2が原因だというのは曖昧な推測に基づいた結論である。水俣病と異なり、因果関係を示すものはない。目の前に差し迫った現象もない。水俣病の場合は、メチル水銀は同定できなかったものの、因果関係を示す事例があった。にもかかわらず,曖昧な推測に基づいた結論だと水俣病への対策を早急に打たなかったのである。一方、温暖化問題では、証拠がないのに、温暖化の原因がCO2であるという曖昧な推測に基づいた結論CO2の問題を解決しようとする。

ここで、地球温暖化問題と水俣病問題を比較すると以下のようになる。

 

水俣病

地球温暖化

原因

当初から、触媒から副生した有機水銀だろうということが指摘されていた。チッソ内部でも水銀を含む排水かも知れないことが推測されていた。

CO2と温度変化の相関関係から原因が推定されているに過ぎない。ただし、温度変化がCO2変化より先行することがわかっている。H2OCO2より大きな温室効果ガスであることも事実である。CO2以外に太陽の影響など多くの因子が指摘されている。

影響

動物、および人間に深刻な害があった。詳細な反応機構は不明だったが、因果関係は明白だった。

温暖化により異常気象が起きると言われているが、それを裏付ける統計的データは皆無である。CO2は植物の育成には有益である。現代の温暖期の気温は、小氷河期の気温より、人間にとりプラスの要因が多い。

対策

詳細な反応機構は不明だったが、因果関係がはっきりした時点で対策を取るべきだった。対策が10年以上遅れた。御用学者の見解も遅い対策に加担した。

原因は不明。シミュレーションのみで科学的根拠は皆無。にもかかわらず、プロパガンダが先行してCO2排出量を減らす対策が取られようとしている。

 

官僚と御用学者の存在は大きく問題の解決を遅らせた1956年、熊本大学医学部の研究チームにより、有機水銀原因説が有力視された。同年1112日には厚生省食品衛生調査会常任委員会・水俣食中毒特別部会が大学と同様の答申を出した。ところが、厚生省は翌13日に同部会を突如解散した。有機水銀説に対する異説として、1959年、清浦雷作・東京工業大学教授らがアミン説を発表し、その主張がそのままマスコミによって報道された。1960年、日本化学工業協会が田宮猛雄・日本医学会会長を委員長とする「田宮委員会」を設置して有機水銀説に反論したのである。

温暖化の問題も、科学的根拠は皆無なのに、官僚、御用学者がCO2による人為的温暖化仮説を唱える。IPCCのメッセンジャーになっているに過ぎない。国立環境研究所、気象庁、環境省およびそれらの機関に関係している大学の研究者が問題の本質を曖昧にしているのである

曖昧な推測に基づいた結論に対する応答の仕方はともすれば主観的になる。科学事象の場合はあくまで科学的事実に基づいて判断されるべきである。温暖化に対してCO2を削減しなけらばならないという科学的事実は、実はどこにもないのである。

水俣病の場合は、因果関係のはっきりした科学的事実があったにもかかわらず、曖昧な推測に基づいた結論に対して対応を怠った。温暖化の場合は、科学的事実がないのだから、曖昧な推測に基づいた結論で圧力をかけることが環境問題を真に考えている行動だとは思えない。一方、懐疑論者が環境問題に背を向く人々だとも思えない

どこにも、CO2排出量を今削減しないと手遅れになるという理由を見出せない。では、今CO2を削減するとどうなるのだろうか。もう少し考えてみたい。

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Fig.2


 

何もしないことこそ真の温暖化対策 - 2

CO2排出量を数10%減らしたところで、CO2は増え続け、数年という時間軸を先延ばしにするだけに過ぎない」のか、あるいは「CO2排出量を数10%減らせば、2100年までに産業革命以来から2℃の温度上昇に抑えることができる」のかという問題を考えてみたいと思う。

CO2排出量の削減の効果について考えるためには、いくつかの基本的な事実を整理しておく必要がある。

1.CO2バランス

太古のCO2を固定した化石燃料を燃やして元のCO2に戻すと、現在の炭素サイクルにおける人為的なCO2の部分が若干増えるだけである。下図は炭素サイクルを定量的に表わしている。人間が排出するCO2由来の炭素は点でしかない。大部分が海に溶解しているCO2または炭酸塩である。その次が植物の光合成、分解によるものである。化石燃料にも多くの炭素が固定されているが、その内のほんの一部が燃焼などにより大気に循環されるに過ぎない。

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Fig.3 (Sources: 1, 2)

CO2サイクルにおける人為的起源と自然サイクル起源の割合は、例えばIPCCによると5:150である。下の図で示すように、人為的起源のCO25(GtC/yr)とすると、自然サイクルのCO2150(GtC/yr)という量が放散、吸収をしてバランスしている。だから、概略CO2バランスは、自然サイクル起源のCO2で決められると言える

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Fig.4

2.熱で生成するCO2

下図で示すようにCO2排出量の変化速度(緑の破線)と温度変化(青の実線)は良い関係にある。(Murry Salby

)

Fig.5

従って温度変化に関係する定数をγとすると

 

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で表され、CO2濃度は次式のように温度の積分値で決まる。

 

イメージ 3

 

温度がCO2濃度で決まるのではなく、CO2濃度が温度で決まる。すなわち、温度が上がると海からCO2の放散量が増加する。さらに、生態系の有機物の分解が増えてCO2が放散される。氷床データからCO2濃度の変化は温度変化より800年遅れていることは良く知られている。さらに、現在のCO2濃度変化は温度変化より10ヶ月遅れていることもわかっている。CO2と温度変化の時間的な相関は温度がCO2濃度で決まるのではなく、CO2濃度が温度で決まるということを裏付ける。

 

3. CO2濃度と排出量

人間が排出してきたCO2と大気中のCO2濃度の変化は下図のようである。1979年から1983年にかけてCO2排出量は減少した。2002年以降、CO2排出量はそれまでより大きく増えた。それにもかかわらず、CO2濃度は毎年単調に増加している。これは上で述べたように、概略CO2バランスは、自然サイクル起源のCO2で決められるということを支持する。

CO2 emission vs concentration

Fig.6

4. 発展途上国と先進国のCO2排出量

今世紀の発展途上国のCO2排出量の割合は現在約50%で、今後60%以上になるだろうと見積もられている。

グラフ:世界のCO2排出量の見通し

Fig.7

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Murry Salbyは人為的な排出量の割合は下図のDrAで示される28%と見積っている。自然サイクル起源のCO2は、下図の緑の点と赤の点の間の領域で示され、全CO272%である。そして自然サイクル起源のCO2は年々増え続けているとしている。化石燃料の使用を仮に全くゼロにしても、大気中のCO2の濃度は減らないことになる。これは、熱で生成されるCO2が大きく寄与していて、小氷河期から現代の温暖期にかけて温度が上昇していてゆっくりと平衡状態に近づきつつあるものと解釈できる。

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Fig.8

仮にCOP21などの取り決めで、非常に楽観的に2070年代に排出量を半分にできたとする。Murry Salbyは、全CO2濃度の50%の変動経緯と比べてみると下図で示すような経過になるものと推定している。

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Fig.9

世界の全化石燃料の使用を半分にし、快適な生活と活発な経済活動をあきらめてもCO2の排出量は削減できない。そもそもCO2排出量と人口増加とは下図で示すように良い相関関係があって、発展途上国の国々は人口増加、経済発展とともに化石燃料の使用を増やし続けるからである。われわれが、発展途上国に生活水準を引き下げるように要求することはできない。

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Fig.10

以上から、急激な寒冷化でも起きない限り、「CO2排出量を数10%減らしたところで、CO2は増え続ける」ものと推定される。莫大な金を浪費してCO2排出量を規制する根拠は見出せない。



 

何もしないことこそ真の温暖化対策 3

1950年代後半に黎明期を向かえた石油化学工業は、日本の高度成長の立役者のひとつだった。それから25年後に起きた1973年のオイルショックは、安い石油も有限であることを思い知らさせた。5年後には、二次オイルショックがおきた。以来、我々は省エネルギーに努め、実用的な代替エネルギーを探求して現在に至っている。

オイルショックの時の石油価格の変化でわかるように、石油の価格は政治的な要因で大きく変わる。一年前まで$100前後で停滞していたのに、今日(12/15/2015)の石油価格は、$40以下になっている。


Fig. 11

石油埋蔵量の推定は難しい。データにも大きなバラツキがあるが、下記はその一例である。オイルショック当時 R/P 30年しかないと大騒ぎしたものである。驚くことに、結果的にオイルショック前後の30年間は R/P の変化はなかったのである。需要は年々増加していた。新しく確認された埋蔵量が加えられた。また、石油の価格高騰により可採埋蔵量が変わったからでもある。

http://mnishioka.com/Warming/images/Shokku8.jpg
Fig.12

石油より10倍近くの埋蔵量のある石炭を有効利用し、石油を化学原料として温存すれば、100年以上は化石燃料の確保とエネルギー供給は安泰だろうというのが当時の私個人の考えだった。この考えは恐らく今世紀末まで当てはまるだろうと思う。それから、日本を取り巻くエネルギーの状況は四つの点で大きく変わった。

(1)原子力エネルギーの開発に総力が投入されたこと、

(2)全ての炭鉱が閉山されたこと、

(3)非常に限られた石油だったが、意外にも埋蔵量が年々増えていること、

(4)シェールガスの掘削が可能になったこと

である。

http://www.inforse.org/europe/dieret/WHY/fuellif.gif
Fig. 13

近年、シェールガスの掘削技術の発達によりUSAでは、石油、天然ガスの埋蔵量が下図でわかるように、急激に増加している。

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Fig. 14

従って、人口は増え続けているが、化石燃料、エネルギーを確保するという状況は40年前より随分楽になっている。しかしながら、あと半世紀もすれば化石燃料の逼迫は現実実を帯びてくるかも知れない。別に、「人為的な温暖化の仮説」を喚き立てなくても、化石燃料の使用量は減って行く運命にある。ローマクラブやIPCCのような、擬似科学とプロパガンダで、必要以上に恐怖をあおるグループがいることは残念なことである。

石炭は植物が長い地球時間で炭化してきたものである。その証拠に、研磨した石炭の切片を顕微鏡で観察すると樹木の組織、胞子、花粉などの植物の遺骸を見ることができる。同様に、石油は、バイオマーカー化合物と言って、生物起源の有機化合物を石油の中に見出すことができる。ガスクロマトグラフィーと質量分析機を利用するとイソプレノイドなどの考えられないほどの詳細なバイオマーカーの分子構造を同定することができる。

従って、石油、石炭を燃やすということは、太古の炭素サイクルから少しはみ出て固定された生物起源の炭化水素化合物を、もとの炭素サイクルにほんの少し戻してやることである。決して、公害物質を生成させることではない

以上のように化合物のサイクルを考えてみると、化石燃料が決して毒でも何でもないことがわかる。前置きはさておき、「化石燃料のうち特に石炭の使用量を削減すべき」かどうかについてである。

USAは石炭の埋蔵量が世界のトップである。全米に結構くまなく埋蔵されていて、アメリカ大陸の西から東へと石炭化度は大きくなる。東部の南北に連なるアパラチア山脈には石炭化度の高い、製鉄にはもってこいの良質の石炭が豊富に存在する。この石炭化度の粘結炭と言われる石炭は、鉄鉱石を還元して、溶かすために燃料となり、高温で軟化してかつ鉄鉱石を支持するのである。日本の炭鉱は、全て閉山されたが、まだまだ石炭がある。しかし、製鉄用に適した石炭は採れなかった。

ピッツバーグは、アパラチア山脈の中にあり二つの大きな川に挟まれていたから製鉄業が発展するには良い立地条件がそろっていたのである。そのピッツバーグ近郊で私の人生で初めて家を探した時に、面倒を見てくれた不動産屋からこの家の下には古い炭鉱の跡はないから大丈夫だと言われたこともある。

石炭は、石油より安い、石油よりかたよりなく埋蔵されている。それに埋蔵量が、石油に比べて圧倒的に多いのである。世界中では石炭は発電量の40%を占め、最も重要なエネルギー源である

電源別発電電力量の構成比 (2011)
Fig. 15

しかし、分子量が大きく炭化度の進んだ炭化水素であるため、炭素の割合が天然ガス、石油に比べて大きい。だから、石炭を燃やしてエネルギーを生じさせると、同じ生成熱量ベースでは、天然ガス、石油より多くのCO2を排出することになる。そこで、「人為的温暖化」の仮定を肯定する人々から目の敵にされることになる。

http://www.fepc.or.jp/resource_sw/pres_nucl_riyu_co2_inde01_l.gif
Fig.16

石炭は固体なので、石油、シェールガスのように地層を浸透して貯留することがなく、無機物を含んだ混合物として存在する。また、熱履歴を受けているので硫黄を多く含むことがある。燃焼させると水銀が燃焼ガスに含有される事もある。従って、石炭を採掘した後のクリーニングは重要なプロセスである。

だから、石油、天然ガスに比べると厄介な面もあるが、石油より安くてどこでも入手できる。エネルギー源として最も重要な位置を占めることに変わりがない。短絡的に「化石燃料のうち特に石炭の使用量を削減すべき」だとは言えない。現実を見据えて、化石燃料全体として考えるべきである。


 

 

何もしないことこそ真の温暖化対策 4

CO2による人為的温暖化」の仮説を肯定する者(杞憂家)も否定する者(懐疑論者)も、人類にとり、よりよい環境を求めている。また、杞憂家も懐疑論者も、人類の繁栄と幸福を求めている。しかし、前提が異なると現代の温暖期に対する考え方と対処方が180度違うことになる

両者の前提と対処方を箇条書きにして対比すると以下のようになるだろうか。

杞憂家:

(1)現代の温暖期が、人類が排出したCO2に起因するものと仮定する。

(2)温暖化する気候は、気候変動を引き起こすと推論する。

(3)化石燃料の使用を極力控える。

(4)化石燃料使用者には、炭素税などのペナルティーを課す。

(5)再生可能エネルギーは、コストが高くても極力推進していく。

(6)CO2削減のために、原子力エネルギーをある程度許容する。

(7)バイオマスからのバイオ燃料も有望とする。

懐疑論者:

(1)現代の温暖期が、小氷河期を終えて温暖化しつつある自然サイクルの過程と捉える。

(2)温暖な気候は、人類をより繁栄させる。

(3)CO2は植物にとり有益である。

(4)化石燃料は、有限であるということを念頭に入れて、有効に利用していく。

(5)化石燃料はそれぞれのコストに見合って、合目的に使いわけする。

(6)原子力エネルギーは、将来のエネルギーの確保のために、最低限必要な技術を確立させておく。

(7)再生可能エネルギーは、将来のエネルギーの確保のために、開発、利用する。太陽電池、風力発電は、自然との共存を考える。

(8)バイオマスは食料の増産を第一義にする。

まず、中世の温暖期、小氷河期、現代の温暖期の変遷の概観である。この間、温度は下図で示されるように変遷してきた。

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Fig. 17

中世の温暖期の一例として次のことが良く言われる。グリーンランドと西にあるバフィン島に、1000年前後、バイキングなど北欧の人々が住みついた。そして、小氷河期が始まる1400年頃に村は捨てられた。下の写真は教会跡で、14089月に最後の結婚式がこの教会で行われたと記録にある。新郎はノルウェーからやってきた交易船の船長、新婦は地元の娘であった。その頃の気候は「小氷河期」と呼ばれる厳しい寒期に突入しており、14501500年頃には流氷が増えたこともあってグリーンランドと他の地域の連絡は全く途絶してしまった。その後カップルはアイスランドへ移住したらしい。気候変動により全ての人々がいなくなった。

Greenland and possibly neighboring Baffin Island was settled by the Norse during what has been assumed to be a temporary warm period. They disappeared in the 1400s. Southern Greenland’s Hvalsey church is the best preserved Viking ruin. (Wikimedia Commons)
Fig. 18

小氷河期について、ウィッキペディアからの一部を引用すると次のようである。この時期、テムズ川やオランダの運河・河川では一冬の間完全に凍結する光景が頻繁に見られ、人々はスケートや氷上縁日(フロスト・フェアー)に興じた。飢饉が頻繁に発生するようになり(1315年には150万人もの餓死者を記録)、疾病による死者も増加した。日本においても東日本を中心にたびたび飢饉が発生し、これを原因とする農村での一揆の頻発は幕藩体制の崩壊の一因になったとも考えられる。

Abraham Hondius: Frost fair on the Thames
Fig. 19

最後に、現代の温暖期についてである。人工衛星の観測結果によると、下図に示すように1982年から2010年の間数%のオーダーで地球上の緑が増えた。大気中のCO2濃度が増加したことと、温暖化の影響があるだろうと思われる。過去1500年の温度変化でわかるように、温暖期と寒冷気と1.5度弱の範囲で一通りのサイクルを経験した。現代の温暖期の温度は中世の温暖期の温度に匹敵する。

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Fig. 20

杞憂家は、現代の温暖期に起きている気候の変動を異常気象として、今後さらに増えるだろうと恐怖をかきたてる。実際には現代の温暖期に異常気象が増加しているという統計的な数値は一切存在しない。総じて、上記の緑の増加でもわかるように、温暖な気候は人間にとり有益であったものと思われる。事実、ヨーロッパでは中世の温暖期の時期に、大幅に人口が増加した。これによって、前時代からは政治的・経済的に大きな変化が生じた。1250年の大幅な人口増によって引き起こされた経済成長は、地域によっては19世紀までは二度と実現されなかったほど大幅なものであった。現存する豪華な建造物はほとんどがこの時期に建てられたものである。

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Fig.21ノートルダム大聖堂は、中世盛期の建築の好例の一つ


 

何もしないことこそ真の温暖化対策 5

下図で示すように、現在13億の人々が電気のない生活を送っている。27億の人々は衛生的な台所を持っていない。特に北部以外のアフリカや開発途上のアジアが深刻である。そのうち95%エネルギー貧困である。広範なエネルギーの供給がないと、木材と家畜の糞の燃焼による公害、非衛生上の問題で、2030年までに150万の乳児が死亡するだろうと言われている。

Global energy poverty map
Fig. 22

人類にとって、温暖な気候エネルギーの確保は、地球環境の保全と、人類の繁栄と幸福のため最も基本的な要素である。四大文明を含めて人類が栄えてきた地域、時代は、ローマ温暖期、中世温暖期など温暖な気候の時期だった。

なぜ現代の温暖期の中にいる我々がこうも地球温暖化に対して、懐疑的に悲観的にならなくてはならないのか。産業革命における石炭20世紀当初の自動車産業を花開かせた石油、シェールガス掘削開発による天然ガス(メタン)と、言わば閉じ込められた太陽エネルギーという天の恵みに感謝せずしてどうしろと言うのであろうか。

幸運にも、現在の我々は現代の温暖期に生きている。そして、天の恵みである化石燃料を手にしていて、この21世紀に埋蔵量、生産量のピークをむかえようとしている。現在の差し迫った課題は、エネルギー貧困をどうやって解消していくかである。

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Fig. 23

エネルギー消費量とGNPの関係は下図のようになる。生活水準を上げるためには、エネルギーの消費量を上げることが必要である。そのためにはエネルギーは経済的で安くなければならない。

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Fig. 24

フィラデルフィアから西へ30分も 行くと農村地帯である。その中にアーミッシュの人々が暮らすランカスターがある。彼らは信条に基づき、電気、車を使わない生活を今も送る。アーミッシュはペンシルバニアのランカスターだけでなく各地に 散在する。ここオハイオの東部にもまとまったグループがいる。アーミッシュの起源 はドイツであり、ランカスターでは小学校からドイツ語を教える。このオハイオの町はベ ルリンと呼ばれる。ランカスターはドイツがなまり「ダッチカウントリー」と言われ、オ ランダの町と混同する。

カナダのセント・ジェイコブズ(人口二万七千人)というところは、カナダに根付いたア ーミッシュの町である。ダウンタウンは多少観光地化されていて百余の店が並ぶ。その中 の陶芸店に立ち寄った時、一隅のガラスケースの中の焼き物に興味を惹かれた。よく見る と、Raku(ラク)・Ware(ウエア)と書かれ、日本の楽焼きをオリジナルにした 物と説明されていた。この町はロシアからの移民や、スイスからのアーミッシュの移民等 が混ざり合っており、一体どのように楽焼きが伝来されたのがろうかと不思議な感動を覚 える。

ワシントン DC の郊外に Germantown という DC のベッドタウンがある。Germann とどういう関係があるのか定かでないが、アーミッシュの人が毎週末に訪れ開かれる店が ある。ペンシルバニア南部からくるその人達は、車を使うし店には電気がある。そうした アーミッシュもいる。

アーミッシュの小さなコミュニティーがあるところには、道路に馬車に注意するようにと いうサインがある。馬車の後になるとノロノロ運転となるが、人々はわきまえていて忍耐 強い。

エネルギーの使用量を減らすためには対処療法ではだめで、根本的な生活様式の変換をしなければいけない。このアーミッシュのように電気のない生活をし、車の使用をやめるような決意が必要である。そこまで極端にしなくても、高い環境税、エネルギーを多く消費する工業の縮小による高い失業率、公共機関の税収の激減には覚悟が必要である。CO2の排出量を削減すること、化石燃料の使用量を大きく減らすこと、代替エネルギーに変換することには相当の覚悟が必要なのである。

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Fig. 25

水俣問題の時がそうであったように、温暖化問題においても官僚御用学者の存在は大きい。国立環境研究所、気象庁、環境省およびそれらの機関に関係している大学の研究者が問題の本質を曖昧にする。日本に限らず、アメリカのNOAANASAEPAの研究者も多かれ少なかれ本質は日本と同じである。

だから官僚御用学者が次ぎのように語る時には注意が必要である。

1.  現代の温暖期に異常気象が増えているという統計的で客観的な事実はない。だから彼らが温暖化により異常気象が増えていると言う時。

2.  CO2により人為的に温度が上昇しているという統計的で客観的な事実はない。だから彼らが具体的な数字で温暖化を語る時。

3.  人工衛星による温度結果を無視して、地上の温度計の観測結果だけを述べる時。

4.  人為的な温暖化の科学的な事実はない。だから、エルニーニョ現象をCO2による現象とごまかす時。

我々は、現代の温暖期に感謝すべきで、貧困問題を棚上げにして、化石燃料を非常識なレベルまで削減する合理的な理由を私には見出せない。何もしないことこそ真の温暖化対策なのである。

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Fig. 26