科学から遠ざかる地球温暖化問題
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学生の頃、高井戸にある下宿から、転居してきた浦和の両親のもとへ時々帰っていた。下りの京浜東北線で荒川を越えると川口である。車窓から公害資源研究所のサインが良く見えた。公害資源研究所は、当時の通産省、工業技術院の管轄だった。もとは燃料研究所と呼ばれたらしい。徐々に問題となってきた公害を研究する部門を新設して公害資源研究所となったという。環境省の前身の環境庁が1971年にできたばかりで公害を専門に研究する国の部門はまだなかったのだろう。
Fig.1-15
(川口を舞台にした”キューポラのある街”から)
1974年になると環境庁のもとに公害研究所ができた。1990年には環境研究所となり2001年には環境庁も環境省へ格上げされた。IPCCが創設されたのが1988年である。恐らく環境研究所になった当時から、気象庁とともにIPCCの日本の窓口になっていたのではないかと思われる。この辺の経緯をご存知の方がいれば教えて頂きたいものである。
2007年にIPCC がノーベル平和賞を授与された後、IPCCから環境研究所へ感謝状が送られてきたという。こうした経緯で環境研究所はIPCCとは抜き差しならぬ関係になってしまった。「CO2による人為的温暖化の仮説」をどうしても肯定してIPCCをサポートをしていかなければならない運命のようだ。
温暖化問題とは「CO2による人為的温暖化の仮説」が正しいかどうかである。仮説を肯定するということは、世界中で数千はあるだろうと思われる火力発電所で火を焚き、地球上に数億はあるだろうと思われる車の内燃機関で燃料を燃焼させると地球の温度が上がるということを認めることでもある。
その仮説を肯定するためにIPCCは温暖化の原因をどういうふうに説明しようとしているのかを、昨年出た五次報告書を見てみる。全部で5600ページ以上あり、また非常に読みにくくい報告書である。詳細な検討を加えることが目的ではないので、井上氏の政策決定向け要約の翻訳文でたどることにする。
まず、序のところで知見の確実さを確率的に表現するという説明がありとまどうことになる。知見の確実さを確率的に表現することは、通常、科学論文では受領されない。
井上氏のウェブサイトからWordにコピーしてプリントすると50ページになる。そのうち気候変動の原因について述べているのは僅か3ページである。残りは気候変動の影響、そのための対処について費やされる。
従って、気候変動の原因についてはほとんどわかっていないことを示している。また、将来の影響ばかりを記述する。我々は将来を空想して、当たるも八卦をしようとしているのではない。この報告書は論文とは程遠い科学エッセイである。
”気候変動の原因”のセクションでは、人為的なCO2排出量が1970年以降増加し続けてきた。それとともに温度も上昇してきた。傾向は同じである。だから「CO2による人為的温暖化の仮説」は正しいという。以下は”気候変動の原因”の冒頭である。(井上訳より)
人為起源温室効果ガス排出量は、工業化前の時代以来、主に経済成長と人口の増加にともない増加し、過去と比較して現在が最も多い。これが、……20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い。
なにやらローマクラブのいう
現在のままで人口増加が続けば、資源の枯渇や環境が悪化し、100年以内に人類の成長が限界に達する可能性が極めて高い。
ということを思い出させる。
科学的実証に基づかない、科学エッセイのIPCC報告書をバイブルのように扱う環境研究所は、地球温暖化問題を科学から遠ざけるもうひとつの機関である。
「CO2による人為的温暖化の仮説」を肯定する人々や、しなければならない機関は来るCOP21で「パリ合意」をめざしている。科学的な裏づけのないCO2を削減をし、結果的に貧しい人々を苦しめることになるかもしれない。
USAでは、「CO2による人為的温暖化の仮説」に否定的な個人、団体が活動し続けている。下の機関もそのひとつで、今回新たに署名活動を開始した。そして、いくつかの新しい動画を作成している。
· Forget‘Climate Change’,
Energy Empowers the Poor
· Greener on
the Other Side: Climate Alarmism—Facts, Not Fear.
科学から遠ざかる地球温暖化問題
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先週の土曜日(10/3)は、雨で日中も10℃を越えることがなく一日中、肌寒い日だった。この秋初めて暖房を入れた。しかし、夜になると雨も上がり気温が若干上昇して10℃を超えた。これは、暖かい大気が侵入してきたからである。夜だから温室効果ガスの影響は小さい。暖かい大気の持つ運動エネルギーで気温が上がったのである。
当地では、冬、
freezing rain という現象を良く経験する。寒い雪の日に暖かい空気が進入してくると、上空は雨でも地表は氷点下なので、雨が地表付近で凍ってみぞれになるか、地表で雨が凍りつく。木々の枝は凍りついた雨が付着して多くの枝が折れたりする。車の運転は大雪の時よりも危険である。雪の時はスピードを落として運転できるが、地表が凍りついた時は、運転ができない。市が塩を散布して、氷が融けるまで待たなければならない。これも上空に侵入してきた暖かい大気の運動エネルギーの結果である。
大気の温度は、窒素分子と酸素分子の運動エネルギーにより決まる。空気は赤外線を吸収しないが、水とCO2の分子は太陽からの直接の赤外線および地表から反射した赤外線を吸収して励起する。励起した分子はすぐ窒素分子か酸素分子と衝突して、空気へ運動エネルギーを与えるものと考えられる。励起した振動エネルギーが運動エネルギーへ変換する機構の詳細は私にはわからない。また空気は、暖められた地表からの熱伝導と空気の対流により運動エネルギーを得る。
Fig.1-19
従って、現在の分圧における水とCO2だけでは、たとえ赤外線を吸収しても大気の温度はほとんど上がらないものと考えられる。大気の大部分を占める窒素と酸素があってこそ運動エネルギーという形で温度を蓄え地球を温暖にすることができる。通常は窒素と酸素ガスは温室効果ガスとは呼ばれないが、実質的には熱エネルギーを蓄えるガスである。温室の中では運動エネルギーの大きくなった窒素と酸素をビニルシートで覆って、小さい空間の中に閉じ込めるから温度が上がる。
熱エネルギーは窒素と酸素の分子の運動エネルギーとして蓄えられるから、夜になってもある程度の温度が保たれ、寒冷前線や温暖前線がくれば温度が急激に変化する。大気温度は窒素と酸素の分子の数または圧力に比例する。それで高い所では、圧力が下がり温度も下がる。この関係は、近藤氏のサイトで詳しく説明されているように、ある高度での温度Tは高度と一次の関係で表される。
T = -a x
(height) + b
多くの温暖化の説明やヒートバランスの図には空気の役割がすっぽり抜けているのだが私の間違った解釈かも知れない。気象庁の温室効果の説明で、下の波線の部分は大切なので明確に記述し直す必要があるものと思われる。近藤氏のサイトで述べているように国立環境研究所の温室効果の説明は一層不明瞭である。
地球の大気には二酸化炭素などの温室効果ガスと呼ばれる気体がわずかに含まれています。これらの気体は赤外線を吸収し、再び放出する性質があります。この性質のため、太陽からの光で暖められた地球の表面から地球の外に向かう赤外線の多くが、熱として大気に蓄積され、再び地球の表面に戻ってきます。この戻ってきた赤外線が、地球の表面付近の大気を暖めます。これを温室効果と呼びます。(気象庁)
私は、明け方このブログのプロファイル写真の愛犬と一緒に散歩する。10月はまだ夏時間で一時間早いので5時は真っ暗である。今日(10/8)は、新月前の逆三日月の左下に金星があった。金星は単なる点だが月に劣らず輝いていた。この星は90気圧のCO2で覆われている。入力したエネルギーの一部は大気の運動エネルギーに変換されるから、大気組成が違っても
laps rate (気温の低減率)は金星と地球とで余り変わらない。金星は一ヶ月以上も太陽が当たらないことがあるが温度は余り低下しない。
カリフォルニア州東部、モハべ砂漠の中に乾燥した盆地のデスバレー国立公園がある。ここは、海抜マイナス86mなので、西半球で最も低く、最も暑い所である。1913年7月10日には観測史上最高の56.6℃を記録した。たまごの凝固温度は黄身が約65度、白身が約75度なので、デスバレーで目玉焼きが焼けるそうである。「気温53度以上の道路にフライパンを2時間放置して予熱。そこにたまごを割り入れると、6分後に目玉焼きが完成する」という。
Fig.1-22
科学から遠ざかる地球温暖化問題
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前回、触れたように大気の運動エネルギーを気温(温度)という物理量で測定している。従って、気温とはN2とO2の運動エネルギーの大きさである。入力のエネルギーは太陽の電磁波
hn
のみだから、温暖化を考えるということは、hn から運動エネルギー
mv2/2
への変換を理解することでもある。
当地は、山が全くないから私が住んでいる住宅地区は360度、地平線で囲まれている。ただし木々が家の間に多く散在するから地平線は見えない。自宅から
10 km 弱のところに 250
エーカー (30 万坪)
の自然公園がある。12,000
- 17,000 年前にウィスコンシン氷河
(Wisconsin Glacier) が後退した跡地にあるので、Glacier
Ridge メトロパークと言う。土地が平坦だからウィスコンシン氷河の動きはものすごくゆったりしていたに違いない。公園には、近くに工場のあるHondaが寄付した展望台があってそこに上れば地平線を見ることができる。
今朝は地平線のすぐ上に新月前の月があり、続いて下から木星、火星、金星と弓なりな形になっているのを見ることができた。数十年に一度ということである。明け方前でも寒くないのは、N2とO2が運動エネルギーという形でエネルギーを蓄えてくれているからである。
CO2がhn から運動エネルギー
mv2/2
への変換に一役買っているのは間違いないのだが、400ppmの分圧のCO2がどこまで関わっているかは疑問である。温室効果については、多くがCO2のIR吸収、放射のみにより説明している。N2とO2の運動エネルギー、さらに立ち入ってH2OのIR吸収、放射そしてH2Oの相変化を考慮した定量的な考察は今手許にはない。このN2とO2の運動エネルギーの理解不足が、「CO2による人為的温暖化」の仮説に対して、我々の理解を科学から遠ざけている要因でもある。定量的な解釈がもう少し明確になった時点で書き加えることにして話を進めることにする。
温暖化について考える時、物理量の大きさが人により主観的に異なって扱われている。これも、温暖化問題を科学から遠ざけるもう一つの要因である。1959年からのCO2のハワイでの実測値は下の左図のように変化してきた。50年間で70ppmの増加は大きいのだろうか。このグラフを通常のゼロからのスケールで書き換えるとその下の右図のようなグラフになる。両方のグラフは、CO2の変動に対して違う印象を与える。異なるスケールで拡大したり、違う物理量を重ね合わせたグラフ、例えばCO2濃度と温度、が横行している。
以前示したスケールの異なる温度変化の図を再掲する。左の図は0.7℃/100年という温度変化が大きいと仮定して描いた図である。それに対して、日常の環境変化を基に描けば右の図のようになるに違いない。明治維新以来、日本が温度の変動で深刻な社会問題になったことはないからである。私が病気になれば、3℃高い39℃を超えることがある。だから、0.7℃/100年という温度変化が大きく、グラフで書けば左の図のようになるというのは、誰かが大袈裟に表現しているだけである。私は、過去130年の温度変化は非常に安定していると思う。
一方、CO2の方は、CO2が温暖化を引き起こす張本人だという先入観でとらえて、50年間で70ppmの増加が大きいとしているだけである。
以下は、人体70kgに含まれる各元素の体内存在量である。主要な6元素が体内の98.5%を占める。炭素は18 wt%である。人体の約60%が水だから、水を除外すると30%が炭素である。炭素は全て炭水化物、たんぱく質などの有機化合物として存在する。元は空気中のCO2を植物が光合成で転換した有機化合物である。植物を直接消化したり、植物を食べた家畜を経由して消化した化合物である。植物、動物は最後にはCO2などに分解して空気中へ戻る。空気が制限された嫌気的分解でメタンになる。
大気中のCO2はわずか400ppmでしかないが、我々の体の有機化合物は大気中のCO2が転換されたものである。だから、CO2は有害物質ではなく我々には必須の有益な物質である。太古のCO2を固定した化石燃料を燃やして元のCO2に戻すと、現在の炭素サイクルにおける人為的なCO2の部分が若干増えるだけである。下図は炭素サイクルを定量的に表している。人間が排出するCO2由来の炭素は点でしかない。
CO2 は人類の歴史上では比較的一定だった。しかし、地球の歴史上では下図 に示すようにかなり変動したものと推定されている。現在より3億6700万年前から2億8900万年前までが石炭紀と呼ばれ多くの化石燃料が生成された時期である。図から、石炭紀の前は
CO2 が 3000-4000 ppm だった。可採埋蔵量の確認埋蔵量に対する割合は、石油 が 50 % ぐらい石炭 が
10 % ぐらいと見積もられている。
石炭の可採埋蔵量は、
BP (Britich Petroleum) のデータによると石油の
4 倍である。従って、全ての化石燃料を燃やして、CO2
に変換すると石炭紀の前の
CO2 のうち 25% が大気中に戻されるものと仮定できる。その量は多くて
1000 ppm である。太古のCO2
は化石燃料に固定されている。それらの化石燃料を燃やしてCO2を大気中に戻してやっても、1,000
ppm を越えることはないだろうと思える。
Fig.1-25
我々の体の水分を除いた大部分は、食物連鎖を通して光合成で作られた有機物である。食料の元はCO2である。さらに、光合成で合成される有機物は、CO2濃度が高い程、温度も温暖な方が収率が高い。
以上より、CO2は公害物質でもなんでもなく人間にとり必須の化合物である。CO2が固定された化石燃料は、今化学原料となりエネルギーを与えてくれる。CO2に感謝すべきである。50年間で70ppmの増加は小さな変化である。
Fig.1-27
科学から遠ざかる地球温暖化問題
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Murry Salbyという人がいる。大気物理の理論家である。「人為的温暖化の仮説」には全く否定的である。30年弱コロラド大学に勤めたが、NSFのグラントの使用に関して問題があったらしい。2008年にオーストラリアのMacquarie
大学へ移っている。ところが、2013年に職を解かれた。ヨーロッパを講演中にパリからオーストラリアへ帰国する航空券が大学によりキャンセルされてしまった。大学の説明によると、「人為的温暖化の仮説」に関する彼の否定的な説のために解雇したのではなく、学生への講義の責任を怠ったことと大学の物件の不正使用にあるとしている。
CO2に対しては、「エセ科学」がまかり通っているので、Salbyの2つの講演から、重要なデータをまとめておく。
https://www.youtube.com/watch?v=2ROw_cDKwc0 (Hamburg, April, 2013)
https://www.youtube.com/watch?v=5g9WGcW_Z58 (London, March, 2015)
Fig.1-24
などいくつかの炭素バランスの見積もりが示すように、人為的に排出されるCO2は全体の数%である。CO2は自然サイクルの炭素バランスにより決められる。人為的に排出されるCO2の増加速度は2002年前後で350%上昇したが、CO2の濃度上昇率は、約2.1ppm/yrで2002年前後で一定である。これは人為的に排出されるCO2が、地球上のCO2の濃度上昇に与える影響が非常に小さいことを示す。
Fig.1-29
下図で示すようにCO2排出量の変化速度(緑の破線)と温度変化(青の実線)は良い関係にある。また、CO2
濃度変化は温度変化より遅れて現れる。温度が変化して10ヶ月後にCO2濃度が変わってきた。
Fig.1-30
従って温度変化に関係する定数をγとすると
で表され、CO2濃度は次式のように温度の積分値で決まる。
温度がCO2濃度で決まるのではなく、CO2濃度が温度で決まるのである。これを裏付けるのが、CO2濃度と温度変化の時間的推移である。氷床のコアからCO2と温度の変化は下図のように分析された。緑の破線がCO2の濃度変化で青の実線が温度変化である。
Fig.1-31
この結果からCO2濃度と温度変化には良い相関があったが、両者には1500年のずれがあった。すなわち温度が変化して1500年後にCO2濃度が変わってきた。
以上示したように、CO2濃度は温度の積分値である。そして、温度がCO2濃度で決まるのではなく、CO2濃度が温度で決まる。
植物が取り入れるCO2は、究極的に大気へ戻るので大気中の炭素同位体13C
の濃度変化はない。一方化石燃料の燃焼では、化石燃料中の13C
が大気へ移動するので、13C
濃度が増える。実際には、13C
濃度は温度の上昇と伴に減少する。これは、大気中のCO2濃度上昇が自然サイクルにより支配され、人為的なCO2の排出による効果が小さいことを示す。
Fig.1-32
人工衛星からの観測によると高濃度のCO2はアマゾンのような人が余り居住していないところで、工業地帯ではないところである。総じて、大気温度が高いところである。
Fig.1-33
CO2排出量は、温度と陸地の湿り度で決まる表面の状態(surface
conditions)に関係づけられる。一方、13C濃度はsurface conditionsとは逆の関係になる。
Fig.1-34
まとめると、
1. 大気の温度は、CO2濃度により決まるのではなく、CO2濃度が大気の温度で決まる。
2. 両者は、温度の変化が先行している。
3. CO2濃度は、大気の温度が高い程大きくなる。
4. 人為的に排出するCO2量と、全CO2濃度との相関は小さい。
下図はイギリス気象庁の1850-2011年の間の温度変化である。温度が上昇したのは、1920~1930年代と1980~1990年代の40年間のみである。両者の温度上昇速度はほぼ同じであり、2000年以降は温度の上昇は観測されていない。「人為的温暖化の仮説」とは全く相容れない。
Fig.1-35
人為的なCO2排出量は、下図が示すように人口の増加とともに増えてきた。温度はCO2濃度で決まるものではないし、まして人為的に排出されるCO2とは関係ない。将来の地球上のCO2濃度を減らす目的で、人為的なCO2排出量を減らしてもCO2濃度は下がらず、また無意味である。
Fig.1-36
科学から遠ざかる地球温暖化問題
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「CO2は地表から放出される赤外線を吸収して大気を暖める。」「CO2は地表と上空の間の赤外線を蓄積する。」「CO2は赤外線の吸収、再放出を繰り返して大気からの冷却を抑える。」
気象庁、国立環境研究所などの専門家がCO2の温室効果についてこのように尤もらしく説明する。だから、ほとんどのネットが温室効果またはCO2の役割についてこのように説明する。自治体、教育機関、環境団体のネットではこの傾向が甚だしい。
No.16で述べた大気中の分子の運動エネルギーと温度の関係は曖昧なので、CO2の温室効果について、もう少し考えてみたいと思う。
次のような仮想実験をしてみる。
透明の箱にN2、O2、H2O、CO2のガスを入れて太陽にあて一時間後に温度の変化を測定する。
Fig.1-37
ケース1では、大気の組成に近い割合でそれぞれのガスを入れて全体の圧力を一気圧にする。ケース2ではケース1と同じだが、箱の底に砂を敷き詰める。ケース3ではケース2と同じだがN2とO2のみにする。ケース4ではケース1と同じで箱の回りは太陽を遮断する。すなわち真っ暗にして15mmの波長の赤外線を当てる。この波長の赤外線はこのガスの中ではCO2のみが吸収する。ケース5ではケース4と同じだが箱の底に砂を敷き詰める。ケース6では温室効果ガスのH2OとCO2のみを入れる。但しケース5と同じ分圧であるので真空状態に近い。そして太陽に当てる。それぞれの温度変化はどうなるだろうか。各ケースの条件は、下表にまとめてある。
Fig.1-38
以上の結果の予想が、専門家のそれぞれで一致するようであれば、「CO2による人為的温暖化」の仮説に対して科学的な認識は同じということになる。これが、一般の人だけでなく専門家によって全く違うから地球の温暖化問題が科学から遠ざかるのである。
以下、私の予想と理由を述べる。あくまで私個人の見解であって間違っているかも知れない。解釈が正しくない場合は指摘して頂ければ良いと思います。
ケース1では温度変化はないものと予想する。なぜなら、入射した太陽光線はほぼ全てが透明の箱を素通りするからである。わずかに含まれるH2OとCO2が赤外線を吸収する。そして、一部のH2OとCO2の分子振動は励起される。励起した分子はN2とO2に衝突するが、分子の振動のエネルギーが分子の併進エネルギーに変換されることはない。
大気の温度は、窒素分子と酸素分子の運動エネルギーにより決まる。運動エネルギーは分子の併進エネルギー、振動エネルギー、回転エネルギーからなる。振動エネルギーと回転エネルギーは小さく、温度への影響は無視できる。従って、大気温度と運動エネルギーの関係は次のようになる。
kT = 3/2・mv2 (eq.
1-1)
これは、学部の物理あるいは物理化学の教科書に必ず出てくる非常に基本的な式である(kはボルツマン定数)。以上から、窒素と酸素分子の運動エネルギーすなわち併進エネルギーが変わらなければ大気の温度は変わらないことになる。
「衝突により分子の振動のエネルギーが分子の併進エネルギーに変換されることはない」ということについては異論があるに違いない。調べた範囲で明確に述べているのは、今までのところこのサイトのみであった。多くの専門家が温室効果について説明するが、最も本質的な科学を曖昧にしているのである。私はこのサイトの説明に賛同したい。分子の振動エネルギーは量子化していて振動の固有エネルギーと共鳴できる電磁波のみを吸収する。エネルギーが転換するには、異なるエネルギー、例えば振動エネルギーと併進エネルギーが共鳴しなければならない。CO2の励起した振動エネルギーとN2またはO2の大気温度に関わる併進エネルギーの大きさは余りにも違い過ぎる。
これ以上は長くなるので、ケース2から6までは次回でひとつひとつ説明していきたいと思う。その間、このサイトを訪れた人も一緒に考えてください。
科学から遠ざかる地球温暖化問題
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Fig.1-38
前回の仮想実験の続きである。ケース1では温度の変化はないだろうということを述べた。ケース2はケース1と同じ条件だが、箱の底に砂を敷き詰めてある。温室と同じような条件である。
この場合は砂が太陽で温められる。絶対零度以上の物体は電磁波を出す。物体の温度(T℃)と放射する電磁波の波長(mm)との関係はウィーンの式として知られている。
l
= 2896/(T + 273) (mm) (eq. 1-2)
H2Oは9.5から10mmで少し吸収を持つ。一方、CO2は15mmの波長を吸収するが、これは上の式から-80℃に相当する。そこで、温かくなった砂からの放射線をH2Oはある程度吸収するが、CO2は無関係と考えてもよい。
Fig.1-40
(R.A.Hanel,et
al.,J.Geophys.Res.,1972,77,2829-2841)
さらに、温かくなった砂からは、熱伝導と対流でN2とO2が温かくなる。従って、H2O、N2、O2により箱の中の気体の温度は上がる。H2Oがなくても、同様にN2とO2により温度は上がると考えられるから、ケース3も箱の中の温度は上がるものと考えられる。
ケース4では、暗い中で15mmの波長の赤外線があてられる。この波長はかなり長いから、この赤外線を浴びて人間が温かく感じるのかは疑問である。いずれにしてもこの箱の中ではCO2のみがこの赤外線を吸収する。CO2は、この波長の赤外線を吸収するのと放射するのとで平衡になる。前回述べたように励起したCO2がN2やO2と分子衝突しても併進エネルギーへ変換されることはないだろうと思われる。それ以上は、何も考えられる物理現象はないから、温度は変わらないものと推測される。
ケース5については、この波長の赤外線で砂が温まることはないだろうから温度の変化はない。ケース6については、大気の主成分のN2とO2がないから、箱の中の温度を決める運動エネルギーの上昇はない。従って温度の変化はない。この圧力でのH2OとCO2の運動エネルギーは余りにも小さい。
この仮想実験の場合、いくら考えてもCO2が温室効果でこの箱の温度を変化させる理由が私には、思い浮かばない。もし誤りがあれば指摘してほしい。
上の仮想実験の解釈を地球に拡張してみる。地球の温室効果については、いろいろな説明図があちこちにある。下のはその中で典型的なものである。
H2Oは確かに温室効果が期待され、CO2より二桁多い濃度である。上の図ではH2Oが抜けている。CH4、N2OはCO2より二桁小さいから無視できる。図に書き込んで、ことさら強調する必要はない。地表から反射される電磁波で、CO2に吸収される赤外線の波長は15mmであるが、地表の温度が-80℃からの反射に対応する。従って、大気温度を上昇させる地表温度としては不十分である。大気温度が上がるにはN2とO2の運動エネルギーが大きくなる必要がある。赤外線を吸収したCO2およびCO2から再放出した赤外線とN2またはO2との相互作用は上で述べたようにこれまた無視できる。上の右の図では大気温度が上がった状態を示すようだが、実際に温度を上げているN2とO2が抜けている。
以上から、「CO2は地表から放出される赤外線を吸収して大気を暖める。」「CO2は地表と上空の間の赤外線を蓄積する。」「CO2は赤外線の吸収、再放出を繰り返して大気からの冷却を抑える。」といったことはありえない。
大気温度を変えるのは、大気の運動エネルギー(併進エネルギー)である。だから、Fig.1-20と Fig.1-21で示したようにCO2で覆われている金星と地球ではLapse
Rate(気温の低減率)がほぼ等しい。
科学から遠ざかる地球温暖化問題
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晩秋である。下の写真(@10/22)は自宅の近くの通りで、色づいているのはカエデの木々である。夜の雨がやんで朝から曇っている。太陽はまだ一度も顔を出していないが、この季節にしては暖かく感じる。この10年の写真、ビデオと比較してみると数日の差で色づき具合、芝生の枯れ方など同じである。当地は内陸なので寒暖の差が激しいのだが、それにも関わらず自然の営みは驚くほど正確である。
Fig.2-1
さて、前回からの続きである。もう少し考察してみたい。空気または窒素とCO2に熱をあてて温度変化を観察した簡単な実験結果は、ネットに次のような例(1, 2, 3, 4, 5)を含めて結構ある。
次のは赤外線のライトをあてて温度変化を観察している。数多くある実験の中ではしっかりしているように思われる。CO2の方が空気に比べて僅かに温度の上昇は大きいがその差は小さい。CO2の比熱は空気より小さいので、比熱の差を考慮すると差はさらに小さい。この結果に基づいて、CO2の温室効果が空気より大きいかどうかは明確ではない。重要な点は空気は赤外線を吸収しないとされているが、温度がCO2と同等に上がっていることである。
別の実験では、CO2と空気の容器を40℃に暖めてから冷え方を比較している。最終的にはCO2の方が温度の保持は大きかったのでCO2の温室効果だと言っている。しかし、両者ともほぼ同じ冷却速度と言える。
もう一つ例を示す。最初の例と良く似ているが、この場合は容器の中に水が入っている。ライトを当てて温度上昇を計っている。実験者はCO2の入った容器の方が温度上昇速度は遅かったという。下の写真ではCO2の方が2℃低い。
以上の実験結果から空気とCO2は同程度の応答で暖められることがわかる。CO2の場合は100%だから、実際の空気中の400ppmでのCO2の温室効果は無視できる大きさである。
上の実験結果に基づけば、一般に言われている、空気は赤外線を吸収しないので温室効果は全くないというのは誤りである。CO2の温室効果であたかも地球が35℃以上も温められているというのも誤りである。
地球のヒートバランスによると、入射した太陽光の30%が大気で反射され、20%が大気に吸収され、残りの50%が地面に到達して表面を暖めるとある。だから、大気圏の大部分を占めるN2とO2もかなり太陽光を吸収しているのではないかと思われる。このあたりの詳細な物理、化学はむずかしくもう一度検討する必要がある。ちなみに、N2とO2は紫外線は良く吸収する。無放射で基底エネルギーへ戻ることも知られている。また、分子同士が衝突した時に赤外線を吸収することも知られている。
どうやらCO2の温室効果と地球への影響はまだまだ仮説の段階のようである。
科学から遠ざかる地球温暖化問題
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シリアからこれまで1000万人以上が難民として国外へ脱出した。2011年から続いている内戦は、2006年から2010年の間に起きた旱魃が引き金になったと言う人もいる。
こうした旱魃を初め大雨、台風、猛暑といった異常気象が、人為的に排出されるCO2のせいだというのが、人為的温暖化の仮説を肯定する人々の言い分である。
前回の実験例でわかるように、地球温暖化に対しては次のような基本的な疑問がある。
1. CO2が温室効果の主要な大気成分というのは仮説に過ぎない。恐らく誤りである。
2. N2とO2は赤外線を吸収しないから温室効果に寄与しないというのは仮説に過ぎない。恐らく誤りである。
3. CO2排出量の増加は現代の温暖期の主要因で、現代の温暖期が人為的だというのは仮説に過ぎない。恐らく誤りである。
21世紀は「人為的温暖化の仮説」を肯定する人々にとっては、はなはだもどかしい時代である。21世紀に入って
1. 化石燃料使用量は2002年を境に3倍以上増えている。しかし、CO2の増加速度は20世紀後半から21世紀に入っても同じである。
2. CO2は一定の速度で増加しているが、温度は上昇せずに停滞している。
3. CO2の変化は温度の変化に10ヶ月遅れて追随している。
だから、人為的温暖化の仮説を肯定する科学的根拠はあまりにも希薄である。そのために、「恐怖に訴える論証」をするのである。No.11で下のような人為的温暖化仮説の大ストーリーAを示した。
のような人為的温暖化仮説の大ストーリーBが考えられた。「恐怖に訴える論証」のためのもう一つの方法である。
人為的に排出されるCO2は85,000個の大気の分子のうちの1個であって、このように希薄な分子がなぜこの大ストーリーBへと導くのか実は誰も知らない。
ノーベル平和賞を授与された元副大統領アル・ゴアは、2007年12月に7年後には北極の氷はなくなるだろうと予言した。その7年後というのは昨年の12月であった。しかし、北極の氷は依然として健在であるばかりでなく先日の10月18日には過去10年で最大となっている。
IPCCはかってヒマラヤの氷河は2035年までには消滅するだろうと言ったのだが、その後修正している。
良く知られているように世界各地で呼び方が異なるが、下記で示される地域で台風が発生している。
これらのうち太平洋西北部の全ての発生頻度は下記のようになっている。決して増えているわけではない。
アラバマ大学にRoy Spencer とJohn Christyという気象学者がいる。二人でNASAの人工衛星を使い地球温度の測定をしている。二人とも国会などでたびたび証言をしている。下記の図は温暖化に関するミーティングで使われたスライドの一部である(ダウンロード: スライド、テキスト)。これらのスライドは統計的に異常気象が増えているわけではないことを示している。
最初の図は米国海洋大気局 (NOAA) のデータである。過去50年以上にわたる竜巻の統計である。1970年代の初期にピークがありそれ以降は徐々に減少している。
Fig. 2-13
二番目のグラフで、Christy は1970年以来、熱帯性ストームとハリケーンが減少しているのを示した。
Fig. 2-14
三番目のグラフで Christy は北半球で過去45年における積雪の変化を示した。増減の傾向は見られない。
Fig. 2-15
次に、ChristyはNOAAのデータを使って、1800年代後半から干害、洪水の頻度に傾向がないこを示した。
Fig. 2-16
次に、Christyは U.S.
Historical Climatology Network データを使って、最高気温の記録頻度を示した。1900-1955年では1955-2013年より多くの記録日数が認められた。
Fig. 2-17
異常気象と気候変動を考える場合、なるべく広範囲、長い時間について統計的に調べる必要がある。今年大雪が降っても昨年のように地球温暖化のせいだと、こじつけて考えることのないようにしたいものである。仮に今、異常気象が起きてもこの19年弱温度は停滞しているのだから温暖化のせいとはいえない。気象庁は、全く信頼のおけないNASAのGISSのデータで、今年も昨年のように前例のないほど暑い年だったというのだろうか。
科学から遠ざかる地球温暖化問題
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11月30日から12月11日まで、パリで、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開かれる。今回の会議は、京都議定書に続く、2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みがどのように決められるかがポイントになる。
科学の論理には関係なく全てがUNのもとで政治的に動いている。それに対応してメディアも動く。No.2で述べたように、1988年にモーリス・ストロングが蒔いた種が花開いているわけである。
日本国内では、論理的な思考を無視した一部の科学者による情報で、政治的な動きを固定化したものしている。科学から遠ざかった温暖化問題の科学的側面を考えようとしても無駄な昨今である。限られた情報を誤って伝達することで大きな危機が訪れる場合は少なくない。
イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器を保有していたという仮定のもとに始まった。 2004年1月28日、イラクの大量破壊兵器の捜索活動を指揮していたCIAのデビッド・ケイ博士が、米上院軍事委員会の公聴会で「イラクに生物・化学兵器の大量備蓄は存在しない。私たちの見通しは誤っていた」と証言し、CIA特別顧問の職を辞した。ブッシュ政権に、限られた情報が誤って伝えられたのである。はっきりしていることは、イラク攻撃の前にも、そして戦闘終結後にも、ブッシュ政権によって、イラクが大量破壊兵器を保有していることを裏付ける証拠は提示されなかった(リンク)。これは、典型的な限られた情報を誤って伝達し大きな危機が訪れた例である。
科学者の一人として、科学の可能性にはいつも期待している。だから原子力発電を全面的に否定するわけではない。石油、天然ガスの可採埋蔵量が約半世紀と言われている。原子力エネルギーは、その後を担う大きな可能性を持っている。1973年のオイルショック後から原子力発電の導入が加速された。一時は電力の40%の比率をめざした。安全性に対して、必要以上の安全性を伝達したのは科学者である。
気候変動についても、限られた情報を誤って伝達することがなされつつある。CO2による人為的温暖化の仮説を裏付ける科学的証拠は何もない。しかし、COP21でCO2削減という摩訶不思議な政策が国際的に実行されようとしている。
化石燃料からのCO2排出量は2002年を境にして300%以上増加している。ところが、大気中のCO2濃度の増加量は2002年前後で変わらず一定である。
CO2サイクルにおける人為的起源と自然サイクル起源の割合は、例えばIPCCによると5:150である。下の図で示すように、人為的起源のCO2を5(GtC/yr)とすると、自然サイクルのCO2は150(GtC/yr)という量が放散、吸収をしてバランスしている。だから、概略CO2バランスは、自然サイクル起源のCO2で決められていることになる。因みに、この図によると大気中には750(GtC/yr)のCO2が存在するので、CO2の滞留時間は150/750=5なので、5年ということになる。
以上から、人為的に排出されるCO2は自然サイクルのCO2に比べて小さいので、大気中のCO2は、人為的なCO2排出量に関わらず増え続けている。Murry Salbyによると人為的な排出割合は下図のDrAで示され28%と見積もられる。自然サイクル起源のCO2は、下図の緑の点と赤の点の間の領域で示され、全CO2の72%である。そして自然サイクル起源のCO2は年々増え続けているのである。化石燃料の使用を仮に全くゼロにしても、大気中のCO2の濃度は減らないことになる。
今まで述べてきたように、現在の大気中の400ppmという濃度のCO2が、大気中の分子の運動エネルギーを上昇させているのかという基本的な問題がある。それはさておいて、COP21の目的である、少しでもCO2濃度を減らすために化石燃料の使用量を削減したいとする。
COP21に向けて各国から出されている削減目標は表現がバラバラで一言では言えない。こうした状況を踏まえて、非常に楽観的に2070年代に排出量を半分にできたとする。全CO2濃度の50%の変動経緯と比べてみると下図で示すような経過になるものと想定される。
世界の全化石燃料の使用を半分にし、快適な生活と活発な経済活動をあきらめてもCO2の排出量は削減できない。そもそもCO2排出量と人口増加とは下図で示すように良い相関関係があって、発展途上国の国々は人口増加、経済発展とともに化石燃料の使用を増やし続けるからである。われわれが、発展途上国に生活水準を引き下げるように要求することはできない。全世界が日本のように出生率を1.4%にできれば、2100年にはCO2濃度が下がる可能性があるかも知れない。それでも本来の地球温度変化とは関係ないはずである。