「全日本短歌大会」
思春期の少年ときに母恋いて微熱あるごと額寄せくる 1993
我が子らは国の市民権得ることを車の免許取るごとく言う 1993
別々の国籍もちてこの国に生きる親子となる日を思う 1993
輪の中にふとさみしさの陰る子のこころを占める帰国の重さ 1993
順応のことばの重さかみしめてわれ送るなり帰国の子らを 1996
風の日は移民の大工の声荒く風に負けじと釘打ちつづく 2002
果たしなき農園(ファーム)に揺れる綿の花はなしろければ奴隷史かなし 2002
父逝くのメール音なく真夜に来て死は薄墨の海に漂う 秀作賞 2003
地下足袋をはいて生き来し父の背が兵でありしを語る八月 秀作賞 2003
「全国短歌大会」
ミドルネームなき名の呼ばれ若者は芝を踏みしめ卒業証書(Diploma)受く 1996
ガレージのボタンひとつで吾のひと日車ごと吐かれ車ごと飲まる 1997
ぎこちなく辞書をひもとく生徒らの指より生まれる五月の葉擦れ 2003
ふるさとの川に遡及する鮭のごと子はアジアへと旅に出でたり(伊藤一彦選者賞)2004
青芝に子の声ころころ転がして帰還のジョンの休日が過ぐ 2004
「河合象子短歌文学賞」
夕暮れの淡き影曳き移民らが港の酒場(パブ)に母国語で酔う(白つつじ大賞) 2000
「国民文芸祭」国民文化祭
職場にて心肺蘇生を習う朝テレビは死刑の執行を告ぐ(秀逸・内藤明) 2000
移民らの犠牲のありて架けられしブルックリン橋行くわれ移民(特選) 2008
幼子と走りし夕べの風をきき小鹿のような自転車ねむる(入選)2015
「宮島全国短歌大会」 河沿いの蜆の貝を踏みゆけば足にやさしきアジアの響き(中国新聞社賞)2002
「国際交流短歌大会」
蛍など誰も見向かぬ異土の地の日に晒されるほたるの死骸 1994
生半可な郷愁はいらないカーテンを引いて蛍を視界より消す 1994
こよいまた栗の花の香の流れきて狂おしき慕情いちにんに流る 1994
残骸のごとき靴塚の前に立ちホロコーストの証人となる 2000
ホロコースト見終えて仰ぐ河桜冷えし魂を晒しつつ歩む 2000
父の魂抱きて河辺を歩みゆくしろき桜の続く限りを 秀作 2003
桜ばなひかりとなりて降る河辺異土にひとりの葬送を終う 2003
「母子手帳」平成年で書かれいて続き世のごと出す人のおり 2006
春芝のような匂いをかきたてる少年・少女と授業を始む 2006
「海外日系文芸祭・みなとみらい文芸祭」(2013年で終了)
空白の旅程を残し発ちし子の母の指先アジアを辿る 2004
岸の辺に残る流氷未だ硬く名のみばかりの春を踏みゆく 2011
積もりいるポプラの綿毛そっと吹き検体の箱開ける夕暮れ(本阿弥歌壇賞)2012
「平成の歌会」
黒は罪・赤は流血・黄は光祈りに遠くJelly beans 食む (塚本邦雄選) 2001
ポトマックに朽ちて残れる運河あり騾馬はこの世の船を牽き上ぐ(塚本邦雄選者賞)2004
蒼空に百年の夢紡ぎおりライト兄弟の生地に立ちて (篠 弘選) 2005
生徒(こ)らの知る祖国とわれの知る祖国重ね合わせて読む「ごんぎつね」(永田和宏)2007
「与謝野晶子短歌文学賞」
きさらぎのひかりがゆきに染まりいてボーンチャイナに透ける指先 (篠 弘選)2005
ハンカチのごとき祖国よ抽出しにふかくしずかにたたんでおこう(河野裕子選) 2009
青虫のごとく頭をもち上げて更年期(メノポーズ)後の腰体操す (篠 弘選)2010
「瀬戸市・文芸発表会」
診察の台を一途に登りきて幼はひとつ深呼吸せり 2012
「大分マラソン短歌」
ゴール前両手を挙げて入りくる息子の一番輝ける顔 2013
翼のごと高く両手を挙げる子よフィニッシュラインの数歩手前で(優秀賞)2017
走り終え力尽きたるランナーを真綿のごとく包む人おり(佳作)2017
高々とガッツポーズの影が越えそしてランナーの越える白線(佳作) 2018
「万葉の里・あなたを想う恋のうた」
芝原に座して花火を待ちいれば川の匂いとなりゆく君は(最優秀賞) 2009
紺青のスペリオル湖の岸ゆけばあなたのような汀線にあう(秀逸) 2010
虫の音の果てゆくまでを聴いておりチーズケーキをふたつに分けて(佳作) 2011
萩野きて脚につきたる草の実を投げれば君に弾ける慕情(入選) 2012
砂をもて築きし城は海に向き君、うたかたのキングとなりぬ(秀逸)
2013 ルビー色のコートを着れば浮かびくるこの肩幅を抱きし人あり (佳作) 2014
癌を病むわれのあとからついてくるインディアンサマーのようなひざしで(入選)2017
パンパスのゆれれば心騒立ちてDeerではじまるふみしたためる(佳作)1/2018
「杉原ウィーク短歌大会」
一斉にスタートを切り走る子ら自爆なき野のタンポポ踏みて(愛賞) 2012
「石川啄木父子歌碑建立短歌大会」(題詠・家族)
アイリッシュ・スパニッシュそして日系を誇りてわれら混成家族(啄木賞) 2012
「城崎短歌コンクール」
川の辺を歩けば志賀に会いそうな道の続けり城崎の町 2013
「河野裕子短歌賞 (愛の歌)」
胸の上に医学書を載せ眠る子よつかの間の海おだやかにあれ 2013
60回 「宮柊二記念館全国短歌大会」秀逸賞
「尿バック」の在りか問いくる電話なりわが休日に乱気流湧く 秀逸 10/13
しなやかに生きんとおもう。癌病みてWig(かつら)を洗う七月の指 10/15
「出雲言葉」短歌部入選
「だんだん」の言葉やさしく背にうけカフェを出れば淡雪の舞う 10/13
「葛城歌壇作品」佳作入選
姿見に”ぴっかぶう”せしおさな子かゆびあと三つのこしてきえる (優秀賞) 11/14
幼子と真昼を駆けし自転車は野鹿のごとく樹したにねむる(優秀賞) 11/15
第22回平成万葉の集い 議長賞入選
ゴミ箱を高く持ち上げトラックは秋のひかりも投げ入れてゆく 11/14
パリ短歌イベント
妹のフェイスブックをたどる旅フランスに遠く生きて来たれば 9/18